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会計と監査実務の最前線
新聞記事など最新の話題で会計的に気になることを公認会計士・監査人の立場から鋭くコメントします!
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日本航空はどうなるのか?
今週は株主総会のピークですが、金融不況のあおりを受け、収益が大幅に悪化した結果、赤字決算⇒無配 という企業も多いと思います。
 
また、単年度の赤字だけで無配とするのは、株価の影響を考えると好ましくないので、頑張って、前年並の配当もしくは多少の減配にとどめる企業もあるでしょう。事業投資に必要な資金を内部留保し、事業に再投資するのがいいのか、はたまた、キャピタルロスを被った株主に対して、少しでもインカムゲインという形で還元するのがいいのか、これはケースバイケースなので、マネジメントが慎重に判断し、株主に納得いく説明ができるかどうかだと思います。

さて、23日に実施された日本航空の株主総会の様子が報じられていましたので、少しコメントしたいと思います。

同社株主にとってみれば無配は仕方ないまでも(そう思っていない人も多いとは思いますが・・・)、将来の再建策が具体的なイメージとして見えない状況で現在の経営陣に任せていいのか、という感覚が強いのではないでしょうか。さりとて、株主総会で動議が出され、現経営陣の全員退陣が可決されることは現実的にはないでしょうから、せめて総会の席上で厳しい質問をするにとどまることでしょう。

私見ですが、日本航空は半国営企業で、今までのJASとの合併などの生い立ちを考慮すれば、経営陣が変わるだけでは如何ともしがたい体質となっているのではないでしょうか(カルロス・ゴーン社長のような人がくれば別かも知れませんが)。また、公共性の高い交通機関という点からも、単に赤字路線を廃止していけばいい、では済まされない特殊性もあると考えます。その一方、同じような公共交通機関としての性格を担っているJRについてはうまく民営化し、利益もきちんと追求しながら経営を行っているように思えますので、日本航空もあながち、それができないということはないでしょう。

しかしながら、会計士の立場で財務的に分析すると大きな問題だけで以下が考えられます(それ以外にも問題山積みかもしれませんが・・・)。

◎過大な有利子負債
利率が僅かあがるだけで、収益拡大やコスト削減で頑張って稼いだ営業利益が吹っ飛ぶ危険性がある。
既に国(日本政策投資銀行など)が退っ引きならないところまで貸し込んでいますので、いきなり貸しはがしということはありえませんが、それがまた経営陣や会社風土として、親方日の丸意識を高め、危機感の欠如につながっているのかなと思います。
普通の企業であれば、財務制限条項に震え上がり、まずは自らの地を流して融資の継続を懇願するところです。

◎年金債務の負担
こればかりは中長期的な視点が考えなければなりませんが、現行の給付水準を維持するようであれば、経営破綻まっしぐらです。さすがにそれは分かっているようで、当期において規定の改定による給付水準の引き下げを行い、利益方向の過去勤務債務を特別利益として一括で880億円計上するようです(記事はこちら)。ただし、既に年金を受給しているOBの賛同が得られるかどうかというところです。万一、これがOBらの反対で実現しないようなことがあれば、なす術無しという感じです。
なお、この給付水準の切り下げで年金問題が解決する訳ではなく、むしろ会計の立場からは現在貸借対照表に計上されている退職給付引当金やディスクローズされている年金債務情報が他の企業並みに実勢を反映したものなのかというところです。他の企業に比べて明らかに高い割引率について、当期末決算(2010年3月期)から強制適用となる改定退職給付会計基準によって、割引率をそれまでの過去5年程度の平均(実務的にはこれによって、2.0%や2.5%賭する企業もある)から、期末日のスポットレートとすることが義務付けられます。10%インパクトルール(変動に重要性がなければ割引率の見直しを反映しない)という妥協案が残ったため、どの程度実質的な影響が出てくるか分かりませんが、日航ほどの高い割引率(2009年3月期決算短信によると1.7%~2.8%(!)。予想では、ボリューム的に2.8%を適用している退職給付債務も多いのではないでしょうか)の場合、影響は大きそうです。
3月にかけて深刻な爆弾になるかもしれません。

◎多すぎる労働組合と高すぎる人件費
言うまでもありませんが、航空事業では、主要なコストは、機体・設備の減価償却費・維持費、燃料代、そして人件費です。減価償却費は中長期的な視点での投資計画から過去のキャッシュ・アウト・フローが期間費用として配分されるだけですから、例えば、減損損失の計上により、以後の会計上の利益は好転させることはできても営業キャッシュ・フローに直接効いてくる話ではありません。また、燃料代は原油相場に影響を受けるため、自らの努力では如何ともしがたい部分が多いでしょう。デリバティブや燃費を改善した機体への投資などの施策はあるでしょうが、即効性を期待することは難しいと思います。
そうなると、即効性の観点から期待されるのは人件費のリストラです。
それでなくとも、パイロットを中心としたサラリーの高さは著しく、一般企業から見ると、「そんなことをやっていて経営が苦しいとは・・・」という感じを抱くことでしょう。GMやクライスラーのケースとも似ています。
社内にいると、それまでもらっていた給与水準を下げるということは人間の特性を考えても、予想以上に大変なことだとは思いますが、会社が経営破綻する否かの瀬戸際ともなれば、その聖域に手をつけざるを得ないでしょう。
また、金額的な影響もさることながら、人件費のリストラをやることによって、社内の危機意識を高めるという効果もあると思われます。

しかしながら・・・・日航の場合、ここで大きな壁にぶつかります。
なんと、日航には会社側1・反会社側7の合計8もの労働組合があるのです!
・日本航空労働組合 ・日本航空機長組合 ・日本航空先任航空機関士組合 
・日本航空乗員組合 ・日本航空ジャパン労働組合 ・日本航空ジャパン乗員組合
・日本航空キャビンクルーユニオン 
・JAL労働組合(会社側)
これらが互いの立場で待遇改善などを求めて、時には強行にストライキを辞さない形で活動をしているのです。経営陣がこれらを一枚岩にして会社のために一丸になろう!と説得するのは容易ではないことが分かると思います。 

雇用者・労働者の主張をいう機関として労働組合の意義は重要と考えますが、やはり会社あっての労働者なのではないでしょうか。

◎隠れ負債や業界独特の会計慣行という不信感
日航の財務諸表については、いろいろな場面で不信感を煽るグレーな会計処理が取りざたされていますが、未だに根深いものがあります。
固定資産の減価償却方法の変更、リース債務のオンバランス問題や機材関連報償費の会計処理など・・・
少し過激な分析ですが、この書籍を読むと、「この会社の投資家になるのはちょっと。。。」という感を抱いてしまいます。
法廷会計学vs

なお、余談ですが日航といえば、山崎豊子さん原作の「沈まぬ太陽」が思い出されます。私も夢中で読んだ記憶が残っています。この秋、渡辺謙さん主演で、待望の映画化です!
公式ホームページはこちら

参考資料:日本航空の2009年3月期決算短信




内部統制報告書が続々と提出
『「重要な欠陥」の開示企業が3社、内部統制報告書の提出は250社超に』(ITプロ記事から)

という記事がありました(同じ内容の記事が6月23日日本経済新聞(朝刊)の投資・財務1〔16面〕にも載っています)。
 
 この記事を見たときに率直に感じたのは、「意外に重要な欠陥がある企業が少ない。やはり、何となく横並びで、余程の突発事項がない限り、Clean Opinion(限定事項のない監査意見)となるんだな。」という感覚です。
 比率では一概に判断できないでしょうが、重要な欠陥が、250社のうち3社程度(1.2%)とはあまりにも少ないのではないでしょうか・・・。決算短信の訂正の状況などを鑑みると、財務報告に係る内部統制、特に、財務報告プロセスに重大な問題を抱えている企業はもっと多いのではと思ってしまいます。
 内部統制監査においては最終的に会計監査人が、会社や監査人が発見した問題やリスクの影響度合いを集計し、質的及び量的観点から、監査意見を表明します。
 なお、米国SOXでは、内部統制の不備を「重要な欠陥」「重大な不備」「軽微な不備」の3つに区分していますが、財務報告への影響等についての評価手続がより複雑なものになっているとの批判があり、日本(J-SOX)では、「重要な欠陥」と「不備」の2つに区分しています。
 従って、監査人としては、発見された内部統制上の問題点が「不備」にとどまるのか否かの専門家としての判断を迫られることになります。
 この判断は特定のクライアントや監査人の主観であってはまずいので、通常、大手監査法人の中ではJ-SOXの監査意見表明において、難しい判断が迫られる問題が発生した場合、法人内で意見レベルを調整する審査機関で協議しているものと考えます。ただし、監査法人内では概ね問題と監査意見のレベル調整は行われていると思いますが、監査法人間でどの程度、すり合わせが行われているかは不明です。
 
 ただし、会社側に立てば、「A監査法人では、このレベルで「重大な欠陥」となったのに、B監査法人ではセーフとなっているのではないか」など、不公平感が出るのは好ましいことではないので、ある程度は監査法人間でアンオフィシャルな意見交換が行われているものと推測します。

 また、今回J-SOXが想定どおり(?)に何となく横並びの監査意見になったのは、いろいろな状況の積上げ結果と思われますが、以下が大きく作用したのではないでしょうか。

①昨年来の金融危機の発生により、むしろゴーイング・コンサーンなどの開示の方重要であり、内部統制どころではなくなった。実際に、どんなに内部統制のしっかり整備・運用しても、企業が存続しなければ意味がない。内部統制の膨大なコストや時間をかけて、事業の収益性を圧迫するくらいなら、多少問題があっても構わないなどの声もあり、利害関係者にとってもそれほど情報の有用性が高くないという認識が出てしまった。

②金融庁が導入にあたりお手本にした(あくまで、金融庁側は「お手本などにはしていない」とのスタンスですが・・・)US-SOXにおいては、適用初年度に重要な欠陥(Material Weakness)を公表した企業が16%に及んだ(出典:あずさ監査法人記事)ものの、その手間とコストを鑑みると、その効果が疑問視されており、2年目、3年目においては重要な欠陥を公表する企業数は着実に(?)減少しています(2年目10%→3年目8%)。これは、内部統制の改善整備の結果とも考えられますが、関係者の間に「初年度は「重要な欠陥」にしたようだが、世論も考えれば、このくらいの問題は「重要な欠陥」としなくてもいいよね」という動きがあったのではないでしょうか。

 J-SOXは、まさにこのようなアメリカでの反省状況の中で適用となりました。さらに金融庁から昨年来、異例ともいえる監査法人に対するプレッシャー「内部統制報告制度に関する11の誤解」などが公表されたことが作用し、多少「甘口」の監査意見判断基準に落ち着いたというところでしょう。
 個人的見解としても、会計上大きなスキャンダルとなる粉飾は経営者不正ですので、内部統制の頂点にたつマネジメント層がこれを無視(Over Ride)してしまえば、防ぎようがないというのが実感です(「内部統制の限界」といわれています)。
 J-SOXが効果を発揮するのは、トップマネジメントを除く一定の責任者や担当者レベルの誤謬(間違い)を企業自らで発見できるようにする点でしょう。これもそれなりに必要なことでしょうが、果たして、外部監査制度までいれて多くの時間とコストをかけて、会社の規模を考えずに義務付けるようなことなのでしょうか・・・。グローバルで見ても、US-SOXに多大コストがかかるアメリカのマーケットを選ばず、そこまでの規制がないEUのマーケットに進出することを選択する企業も多くなっています。結果的に、これがIFRS統一の潮流につながったのであれば、瓢箪から駒で良かったのかも知れませんね。

 現状、業界ではJ-SOXという「お祭り」が少しづつ沈静化しており、7月以降になると、なんとなく「祭りの後」の余韻に浸る感じかなと思います。そう考えると、経営者にとって見れば、「この結果に行き着くために、こんなにお金も時間もかけたのか・・・」という忸怩たる思いが残りそうです。
 
 従って、今こそ、J-SOXが残してくれたもの(2年目以降ありますが・・・)の意味を前向きに考える必要があります!
 
 先日の記事でも書きましたが、IFRSのグローバル経営管理体制につなげる意味での内部統制の意義を見出すことができれば、かけた時間とコストは決して無駄ではなかった、ということになるのではないでしょうか。


本日の新聞記事から(日経)
「企業の減価償却費7%減」(2009年6月17日 日経新聞 財務面)

2010年3月期は主要企業の間で減価償却費の減少が相次ぎ、野村証券調べでは今期の減価償却費は20兆5500億円と対前期比7%の減少と見込まれている。
なお、売上高が前期比12%減(52兆2900億円)と大幅に落ち込むのに対して、経常利益の減益幅は16%の減少にとどまり、減価償却費の減少が利益底上げ要因となる。


当期(2010年3月期)は、下半期以降どの程度経営環境や景気が回復するかによりますが、現状の見通しでは前期以上に企業業績の悪化が予想されます(前期は第3四半期以降が相当の業績悪化となったが、第1四半期までは比較的堅調であった)。
その経営環境のなかで少しでも利益を計上(または損失を圧縮)するためにほとんどの企業が固定費の圧縮に努めています。通常、利益を増やすためには、売上・収益の増大か、費用の減少をいずれか(または両方)を達成する必要がありますが、昨今の経済情勢においては、一部の業種を除き、なかなか売上の増大は難しい状況です。
従って、企業が取りうる戦略として費用削減(コストカット)が優先されることになります。
費用削減のなかで最も即効性のある施策は、人員リストラすなわち人件費の削減です。
既に前期(2009年3月期)までにこの施策を実施し、決算に織り込んでいる企業も相当数に上っています。前期に具体的な人員リストラ計画の実行まで間に合わなかった企業は当期にその費用が計上されてくると思われます。

人件費削減で留意すべきポイントは、
「企業の成長戦略にブレーキをかける縮小均衡の麻酔薬であってはならない」という点です。確かに人員を整理することによって人件費が大幅に削減することができれば、営業利益率は上昇し、収益力が増したように見えます。しかしながら、企業の収益拡大にとって有用な人材まで流出したり、人員リストラが企業全体のモチベーションの低下につながってしまったりしては、中長期的には競争力の低下につながり、企業価値の縮小を招く結果になってしまいます。よって、人員リストラは単に「人件費削減目標○億円」達成のために頭数を合わせるのではなく、企業・本人にとって、それが最善なのかも吟味しながら慎重に行う必要があるのではないでしょうか。昨今、グループ会社で経営手腕を発揮した方が、本社の社長に抜擢されるというケースもありますので、配置転換によって本人の隠れた才能やモチベーションを引き出し、企業全体で新たな人材活性化につなげることも検討する価値はあると考えます。

さて、本日の本題の「減価償却費の減少」についてです。
これは、単純に減価償却費が減少し、利益が底上げされ企業業績にプラス要因となるとして、喜べるものではありません。その減少要因や内容を検討し、メリット・デメリットを十分理解しておく必要があります。
減価償却費の減少要因としては、新聞記事にありましたが以下が代表例です。

1.設備投資の抑制による減価償却費の減少
設備等の固定資産の新規取得を前期に比べ抑えることで相対的な減価償却費が減少する。特に、機械装置等に定率法を採用している企業では時の経過とともに償却水準が逓減するため、新規設備増加が少なくなれば、減価償却費は減少する。

2.減損損失の計上による減価償却費の減少
前期以前に資産計上していた減価償却資産について減損損失を計上。減損損失計上後は、切り下げられた簿価を基準として減価償却計算が行われるため、減損損失計上以前に比べて償却費が大幅に減少する(図を参照)。
減損後の減価償却計算


ここで留意すべきは、減価償却費が大幅に減少する企業において、どちらの影響が大きいかという点です。

2については、既に前期において損失計上されており、一般に当期以降はマイナス要素は発生しません。前期において収益性が低下した過剰設備の簿価を切り下げることによって、当期以降は市場の販売価格や原価率の実態に即した原価配分となり、結果として適正粗利を確保することができる状態になっていると考えればよいでしょう。

一方、1については要注意です。ご承知のとおり、設備投資の抑制は、減価償却費の低減による利益の底上げとキャッシュフローの抑制による手許流動性の確保に効いてきます。しかしながら、企業継続のためには、常に将来の金のなる木への設備投資や研究開発は必須であり、競争力の維持・確保につながるものです。過剰な設備投資を適正水準に見直すという主旨での設備投資抑制であれば、理にかなっていますが、本来、現場的には新たな設備投資または研究開発投資が必要と感じているにもかかわらず、短期的な視野に基づく利益確保のために、これが抑制されるのであれば、本末転倒ということになってしまいます。

むしろ、新規設備投資について定率法を適用することで、利益は圧縮されるが、タックスメリットを享受し、なるべく多くのキャッシュを手許に残し、これを更なる研究開発投資に分配するという積極的な財務戦略を展開する企業もあります。
乱暴な言い方をすれば、減価償却は過去に支出したキャッシュ総額をどの会計期間にどの程度配分するかという損益計算の手法にすぎません。一義的には、計算方法や計上方法によって、キャッシュが増えたり、減ったりする訳ではありません(前述のとおり、税務面まで考えれば、早期に償却損金算入する方がキャッシュにおいて有利)。

結論としては、
「減価償却費が減少して利益が底上げされた」という事実を判断する意味では、人件費同様、それが中長期的に企業競争力や成長戦略にマイナス要素となるものでないかどうかを十分吟味する必要があるでしょう。

本日の新聞記事から(日経)
「有価証券・四半期報告書 提出遅れ すでに35社」
【2009年6月16日 日経12面】

という記事が載っていました。
有価証券報告書や四半期報告書を金商法が定める期限内に提出できない企業の数が増えているという内容です。提出遅延の理由としては、以下が挙げられています。
・決算作業の遅れ
・「継続企業の前提に関する疑義」の解消に向けた対応に時間を要している

なお、金商法での法定期限は、有価証券報告書は決算日後3ヶ月以内、四半期報告書は四半期決算日後45日以内となっています。
東証などの証券取引所は法定期限から1ヶ月以上遅れると、上場廃止要件としています。

3月決算会社は6月末まで、あと2週間余りありますが、すでに期限内の提出は無理と判断した企業も2社出ているようです。

実務経験から言わせてもらうと、
「決算作業の遅れ」を提出遅延理由にするのはかなり異例のことと思います。
そのような企業でも、すでに決算発表を済ませ、株主総会の招集通知添付用の決算資料は作成されていると考えます。
そこまでできていれば、有価証券報告書の経理の状況及び財務セクションはかなりの部分が完成しています。あとは前段のIRセクションですが、これについても、上場企業は会社法に基づく事業報告を連結ベースで作成しているはずですので、ある程度はその内容をコピーすることによって対応可能と考えます。
経理・財務部のキーマンが何らか理由で病欠、または途中退職するなど最悪の場合でも、担当会計士や監査法人が建前上、「二重責任の原則」を守りながらヘルプしてくれるのではないでしょうか。
そもそも、その提出遅延の事実は、まさに適切な財務報告をできる統制環境にないということを露呈するものですので、当然にJ-Soxの監査意見に影響を及ぼすことは避けられないでしょう。その辺を考えれば、多少、見切り発車で場合によっては、後日、訂正報告書を出す可能性が残ったとしても、とりあえず法定期限は守るというのが、経営者の意思ではないでしょうか・・・。

もう一方の、「継続企業の前提に関する疑義への対応」ですが、これはやむを得ない理由として起こりうることでしょうね。
私にも経験がありますが、この対応については、提出企業のみの努力では如何ともしがたい部分があります。
事態は深刻化していますので、法定期限遅延⇒上場廃止 よりも継続企業の前提の疑義が解消されない⇒監査意見不表明(または不適正意見)⇒経営破綻 の方を避けるほうが優先されることになります。上場廃止になっても企業が存続する方がましですから。
 
監査人にとっても、有価証券報告書提出の法定期限に間に合わないという理由だけで、金商法の監査意見を6月末までに決めなければならないというよりは、上場廃止までの1ヶ月の猶予のうちに何らかの再建策(第三者割当増資の実行(可能性)など)や金融機関による支援の証拠を入手できないか検討するのが筋でしょう。
ただし、監査人にとって悩ましいのは、なるべく時間の経過と状況を見たうえで監査意見を表明する方が懸命である一方、既に株主総会招集通知に添付された会社法の監査報告書では何らかの意見表明を行っている場合、これと異なる監査意見が表明される可能性がある点です。
 会社法監査意見はいったん適正意見を表明しながら、株主総会開催時点では金商法の監査意見が未確定という状況では、法的には会計監査人及び監査役会による適正意見が付された決算書は株主総会では承認事項ではなく、報告事項となりますが、既にこれは実態から乖離するものとなっている以上、手続の瑕疵になる可能性があります。
 従って、実務的には特定取締役及び監査役と合意のうえで、株主総会を一定期間延期することになるのではないでしょうか。ただし、無制限に2~3ヶ月延期するのは株主・債権者に対して、経営者及び監査人にとっては、決算報告及び監査義務を放棄することになりますので、事実上困難と考えられます。
 よって、「継続企業の前提に関する疑義への対応」として猶予される時間は1ヶ月程度となると思われます。
 経営者はこの1ヶ月の間に何らかの対応や結論を出し、同様に監査人もこの1ヶ月の間に意見表明を固める必要があると思われます。これは証券取引所が上場廃止として猶予している1ヶ月とも平仄が取れています。

いずれにせよ、3月決算会社で継続企業の前提に疑義が存在している会社は、7月末までが勝負となるのでしょう。


国際会計基準、15~16年の義務化目標
本日の記事から・・・
「金融庁の企業会計審議会は6月11日、欧州を中心に世界100カ国以上で使われている国際会計基準を日本に導入するスケジュールを盛り込んだ中間報告をまとめ、2015~16年に上場企業の連結決算での義務化を目指す方針を明らかにした。最終決定は12年まで持ち越すものの、義務化を段階的に進めることも検討する。欧米との会計統一を目指す姿勢を鮮明にしたが、国際基準への移行に際し企業は決算作成の手間が重くなる可能性がある。」

国際会計基準、15~16年の義務化目標 金融庁審議会が中間報告

 2015年頃からのIFRS強制適用は、ほぼ予測通りなのでそれほどの驚きはないでしょう。一応、最終決定を2012年まで持ち越すとのことですが、これは強制適用範囲を吟味するという意味だと思います。すなわち、国際的に事業展開していない中堅・ベンチャー上場企業にもIFRSを強制適用するのかという実務的な問題が経済界からあがっているためでしょう。
 また、もう一つの課題として、連結決算はIFRSで作成・開示するとしても、個別(単体)決算をどうするかという点です。
 依然として個別決算には、会社法での剰余金処分計算の基礎及び法人税等の課税所得計算の基礎としての意義があります。
 
 私見ですが、前者については、連結貸借対照表(IFRSでは連結財政状態計算書)における純資産をベースとして、個別財務諸表上の純資産を上回らない程度の制限のもとでの剰余金処分を認めても実質的な弊害が少ないような気がします。市場の株価が今や連結財務諸表の実態を反映している点を鑑みても、株主は連結財務諸表を見ているのですから個別財務諸表にこだわる必要はないのではないでしょうか?この点については、会社法の技術的な改正が望まれます。
 そうなると、やはり重要な問題として残るのが、後者の税務計算基礎としての個別財務諸表の意義です。連結納税法人を除けば、課税対象が個々の法人となっている以上、何らかの形で個別決算を行うことは避けられないと考えます。また、個別決算について一定の適正性を与えるためには、監査法人及び公認会計士による外部会計監査が望ましいことはいうまでもありません(税務当局もそう望むでしょう)。ただし、個別財務諸表が外部開示されないのであれば、これに監査報告書を添付する必要もなく、監査法人側からすれば、監査という手続のみを行うことは理論的ではないため会計監査対象は連結財務諸表のみとせざるを得ないでしょう(現状の四半期報告制度は連結財務諸表に対するレビューですが、考え方はこれと同様です)。
 一方、会社法の問題をクリアできれば、外部への開示は不要となるでしょう。現状、連単比較や個別財務諸表のみに開示が求められている、主な資産・負債の内容(特に有価証券明細表などは有報提出会社がどのような投資有価証券銘柄をどの程度保有しているかを知るうえで非常に有意義です)などを除けば、すでにアナリスト的にはそれほど個別財務諸表を重視していないと思われますので、この個別決算情報が非開示となることについてはそれほど弊害はないかと。

要約すると・・・2015年以降は以下のような状況になるのではないでしょうか。
1.IFRS適用の上場企業においては、会社法においても個別財務諸表の開示(招集通知への添付)は不要となる。当然のことながら、有価証券報告書は連結決算情報のみとなる。
 よって、外部に開示される財務諸表は連結財務諸表のみとなる。
 現状の四半期開示の延長なので、第4四半期+αというイメージですね。

2.税務計算上、個別決算は必要となるが、外部開示対象ではないため、監査(またはレビュー)対象とはならない。なお、実務的な負担を減らす意味でも、連結財務諸表が連結納税の基礎となるような技術的な改善が求められます。また、税務当局においても、連結納税を採用する企業集団を増やすべく、連結納税計算の簡便化や一定の優遇措置などを設ける必要があると思われます。

 これらが浸透すれば、会計及び税務がすべて連結というものさしで測ることができるため、IFRSが全面強制適用となる2015年以降においても、それほど抵抗感なく、これを受け入れられるのではないでしょうか。



プロフィール

公認会計士 若松 弘之

Author:公認会計士 若松 弘之
某大手監査法人で監査の最前線に立ち10数年・・・
そこで感じた問題意識を実践するために2008年10月に独立開業しました。現在は、公認会計士若松弘之事務所の代表として、監査だけではない会計関係全般の業務を行っています。
http://www.wakamatsu-cpa.com/

会計や監査にまつわる問題点やコメントを自由な立場から深く切り込んで積極的に発信していこうと思っています。
応援よろしくお願いします。

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