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会計と監査実務の最前線
新聞記事など最新の話題で会計的に気になることを公認会計士・監査人の立場から鋭くコメントします!
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監査法人のリストラ
9月末は、私の元の職場である某監査法人の会計士の方から多くの「退職のご挨拶メール」を頂きました。
ご承知のとおり、監査業界は構造的な不況にあり、J-SOX特需からIFRSへの期待という点で、大量に試験合格者を採用してきました。もちろん、これは監査法人だけの独断ではなく、CPA合格者を国策として増やし続けてきた金融庁行政指導の一環もあったと思います。
いずれにせよ、コストの大半を人件費が占める監査業界において、監査契約の減少、監査報酬の伸び悩み、J-SOX特需の消滅とIFRS業務の低迷という「三重苦」に見舞われた今、取りうる経営手段としては「早期退職プログラム」だったというところです。

問題はこの大リストラがどのような影響として現れるかです。

1つめは、もちろん比較的、若手・中堅で監査法人を退職した人がどのような職に転ずるかです。
2つめは、残された側が、手薄な監査チーム構成のなか、どの程度、監査水準や質を維持できるかです。

この辺は少し落ち着いて考えてみたいと思います。

Written by Hiroyuki Wakamatsu(公認会計士若松弘之事務所
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会計上の見積り
最近の会計基準、特に近年のコンバージェンス対応においては、経営者(企業)による将来予測や見積りが、決算処理の非常に重要な影響を及ぼすようになっています。以下に例示するだけでも、そのインパクトはおわかりになると思います。

・繰延税金資産の回収可能性・・・将来5年間などの事業利益(課税所得)
・退職給付引当金における退職給付債務および年金資産・・・割引率、期待収益率
・資産除去債務・・・将来除去の可能性、除去費用、割引率
・リース会計における現在割引価値・・・借入調達力等を反映した割引率
・非上場投資株式における減損評価・・・将来事業計画を加味した事業価値
・棚卸資産の評価・・・将来における売却可能性、売却可能価額
・デリバティブ金融商品・・・市場における公正価値(市場取引されていないモノも多い)
・固定資産、のれんの減損会計・・・特定事業における将来事業計画、実現可能性

将来のキャッシュ・フローや割引現在価値が、公正価値や現時点での市場取引価格(時価)を反映していることを考慮すると会計のほとんどの部分を将来予測や見積りの要素が占めていると言っても過言ではありません。
監査人においても、会計監査のキモが将来予測や会計上の見積りに関して、企業へのヒアリングと資料レビューによって、経営者の偏向を排除した合理的金額であることの心証をどこまで構築できるかが鍵となっています。
したがって、今や有能な監査人としての資質は、企業・経営者が見積額に至った過程・核心に、いかに迫ることができるかにあるともいえます。

では、企業側は、能力に差がある会計士に円滑に対処するため(「イチャモンを付けられないようにするため」)どのように準備をすればいいのでしょうか?
一つの有効な手段は、会計監査において規定されており、監査人が従うべき実務指針やガイダンスを理解しておくことです。
まずは、「監査基準委員会報告書第44号 『会計上の見積りの監査(中間報告)』 平成22年2月23日 日本公認会計士協会」は目を通しておきましょう。

具体的な話は次回。
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第1四半期決算は資産除去債務に注目です。
3月決算の上場会社では、今まさに第1四半期決算作業を行っており、また、監査法人等にレビューを受けている事と思います。そろそろ決算発表も増えてきていますが、当期から適用となる「資産除去債務」や「セグメント情報のマネジメントアプローチ」への対応はどのような状況かリサーチしてみたいと思います。
正直に言えば、「①事業年度の期首から適用(=第1四半期から適用)」と「②事業年度末から適用(=年度末本決算から適用)」では、対応する会社とレビュー又は監査する監査人、双方にとって、負担感が違うのではないでしょうか。
監査人の立場から言うと、前者①の場合、前期末(3月)決算の監査がようやく終わって、有価証券報告書のチェックも終了、さあ、少し休暇でも・・・というところで、第1四半期レビューが始まるという状況なので、はっきり言って、精神的にかなりきついと思います。
特に今回のように、会計専門家にとってはハードルが高い「資産除去債務」について会社と限られた時間内に議論を詰めなくてはならない場合、大声では言えませんが、「四半期はどうせレビューだから、もう、この辺でいいか・・・」的な雰囲気が充満するのではないでしょうか。
後者②の場合は、第1,第2,第3四半期を経て、2月~3月頃に本決算監査の事前打ち合わせをするため、比較的議論にかける時間もあり、監査人の胸中にも、「レビューではなく、監査だから、しっかりやろう」という意識が少なからずあるものと思います。
これは、個々の会計士や監査チームのみならず、監査法人及び審査部門にも同様な感覚ではないでしょうか。

そう考えると、今回の「資産除去債務」対応は、第1四半期から適用ということで、間もなく、決算のタイムアップも来ることを考えると、会社側としては「今回はとりあえず、ここまで処理した。残りは、合理的な見積ができなかった・・・で勘弁してくれ」というところでしょう。
果たして、これに対して、監査チームはどのような対応にでるのでしょうか??
余談ですが、IFRSの付随業務の提案も活発に行っており、当期の監査報酬交渉が終わっていない企業も多いと思います。各監査法人の業務収益性が相当悪化していることや法人間での監査クライアントの奪い合いやダンピング競争に近い状況も考慮すると、監査法人側にも、今は、クライアントとの関係を良好に保っておきたいという意識が働くのではないでしょうか。そうすると、それほど厳しいレビュー対応はできないのかもしれませんね。

私見ですが、資産除去債務対応などを見ていると、会計・監査理論が独り歩きしている感がぬぐえません。会計や決算を作成する主体である、企業側の意向をもう少し反映させるバランス感があっても良いと思います。
勿論、株主を含めた一般投資家に資する情報が提供されることが大前提ですが、例えば、
「本社の自社ビルに今のところ移転計画や売却計画はなく、将来の資産除去費用を合理的に見積もることは困難なので、これらの計画が議論された段階で速やかに検討・会計処理する」という考え方は投資家目線で見ても、それほど会計理論を逸脱するものではないと思うですが・・・。
やはり、監査法人が指導しているように、何十年後に発生するか分からない資産除去費用をよく分からない仮定を用いて、見積もるべきなのでしょうか。逆に恣意性が介在するような気がしますが。
そこまでを投資家も望んでいるのでしょうか。

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監査人の独立性~ローテーション制度と金融庁による監査法人の処分~(その2)
先日のコラムの続きです。
前回は監査法人におけるローテーション制度についてその概要と課題について触れました。
今回は、いわゆる大手監査法人以外の、中堅監査法人や中小会計事務所(個人会計士含む)を取り巻く昨今の会計監査の状況についてコメントしたいと思います。

昨今のニュースとして業界的に話題となったのは、
「監査法人ウィングパートナーズに業務停止処分、監査証明した書類に虚偽」
でしょう。
同監査法人が巷で注目されていたのは、大手や中堅監査法人がいろいろな問題(監査の実行可能性:Auditablity)で「お手上げ」したいわゆる「いわくつき」上場企業の監査を次々に引き受けていたためです(そのような会社にとっては最後の「駆け込み寺」的な存在になっていました)。

しかも、パートナーの数は5、6人程度で、補助者を使っていたとしても、上場企業を10社近くも引き受けてやっていけるだけの体制にはないのでは?というのが業界内では大勢を占める見解でした。
一部の証券市場の関係者からも、大手監査法人が「No」を出して、市場からの退出カードを切ったにもかかわらず、これに反して上場維持のため監査意見を「売っている」のではないか、などの声も上がっていました。

結果的には、記事にあるとおり、金融庁の検査が入り、法人・個人ともに業務停止の処分が下りました。今後の展開としては不透明ですが、業務停止期間中、クライアントは他の一時監査人を選任する必要があるので、一旦、同監査法人の手を離れます。業務停止期間が明けた後に、もう一度、同監査法人を会計監査人に選任しようとする会社は稀なのではないでしょうか。そうすると、事業継続基盤を失うので事実上、監査法人は解散するのではないでしょうか。この辺の流れは、旧中央青山が消滅した経緯に近くなるのでしょう。

さて、困るのは、今まで同監査法人から監査を受けていたクライアントです。そうでなくとも大手や準大手の監査法人から、三行半を突きつけられた会社が多いので、一時監査人とは言え、それを引き受ける監査人を探すのは一苦労かもしれません。まあ、業界的には今は不況感が出てきましたので、多少のリスクはおかまいなしで、引き受けるところが出てくるとは思いますが・・・・

一方、金融庁による監査法人や会計事務所の検査は、
大手監査法人の検査については、それなりの結果(全ての法人に業務改善命令)を残し、一通り終了(ルーチンの検査は継続)という感じです。
現在は、会計士100名前後、それ以下、の準大手監査法人がターゲットになっています。

ただし、少し厳しいと思うのは、大手監査法人の検査で、監査調書の整備状況や事務所内のリスク管理体制(審査部門による審理制度など)、監査業務のIT化などを見てきた、金融庁の検査担当官が、中小監査法人に行けば、少なからず「何だこれは!!」という感じになるのは目に見えています。
実際、中小監査法人は「個人会計士の寄り合い所帯」という色彩がかなり残っていますので、大手監査法人ほどのお金と間接部門人材をかけられるかといえば難しいでしょう。
つい最近までは、監査手続の水準や監査調書の体系も、結構バラバラだったと思います。
これはその生い立ちからすれば、やむなしでしょう。

このような状況のなか、金融庁が厳格性を追及し、中小監査法人に対して、業務改善ひいては業務停止などの規制強化に動けば、いくらでも処分はできるでしょう。
しかしながら、そのような規制強化は中小監査法人や個人会計士のマインドを低下させ、「金融庁管轄の金商法監査は大手監査法人以外、無理」や「会社法監査だったとしても、会計士協会のピアレビューにあたるで、そのレビュー対応で相応のコストがかかる。法定監査会社数が少なければ割に合わないから、監査を降りよう」などの考えが定着する恐れもあります。

これは、日本の監査業界の裾の広げるという意味では、かなりのマイナスです。
健全な姿は、必ずしも大手監査法人のみが法定監査業務を行うのではなく、監査コストの問題や監査リスクの低い業態などについては第2グループである準大手・中堅監査法人や中小会計事務所等が適切な受け皿になる状態でしょう。

会社規模が大きく、海外に展開しているような企業グループについては、海外ファームとネットワークを組んでいる大手監査法人が監査を担当すべきと思います。しかし、新興企業や国内単一ビジネスなど、必ずしも大手が担当しなくても、中堅以下の監査法人において、十分監査の品質を維持しながら、きちんと経営者をグリップできる余地はあると思います。

監督官庁においても、資本市場と監査業界の健全な育成を鑑み、監査の品質についても大手とそれ以外の溝は着実に埋めていく形で主導してもらえればと思います。
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監査人の独立性~ローテーション制度と金融庁による監査法人の処分~(その1)
昨晩は久しぶりに、私が昨年まで在籍していた某監査法人の某監査チームの打ち上げに参加させて頂き、メンバーの方々と杯を酌み交わしてきました。

3月決算を担当している多くの監査チームは、6月末の株主総会と有価証券報告書の提出が終わり、2009年3月期の監査業務に一通りの目処が付く、この時期に打ち上げ&当期の監査に先立つキックオフMTGを行っています。今回、この監査チームの打ち上げに呼んで頂いたのは、長年この監査クライアントに携わっていたパートナーが、いわゆる「ローテーション制度」に従って、この監査チームから外れる(ローテーションアウト)ために送別会をしようという趣旨もあったためです。私自身も監査法人を退職するまで、このパートナーの方には随分長きに渡りお世話になっていたため、ぜひ御慰労のお言葉をと思い参加させてもらいました。

さて、この「ローテーション制度」ですが、ご承知の方も多いと思いますが、欧米の監査制度では既に一般的になっていたものを、日本でも導入しようということで、以下の取扱いとなっています。
「平成16年4月以降、公認会計士法等により公認会計士・監査法人は、大会社等の連続する7会計期間のすべての会計期間に係る財務書類について監査関連業務を行った場合には、翌会計期間以後の2会計期間に係る当該大会社等の財務書類について監査関連業務を行うことはできません。(いわゆる7年・2年ルール)
 なお、大規模監査法人(上場企業法定監査を数多く担当している大手監査法人など)における筆頭業務執行社員等については、平成19年の公認会計士法の改正により、平成20年4月1日以降、継続監査期間を5会計期間、監査禁止期間を5会計期間とすることになりました(5年・5年ルール)。」


要約すると、監査法人(または会計事務所、個人会計士)のなかで、各監査対象の監査業務に従事し、監査証明(監査報告書)に署名する会計士(いわゆるパートナーや業務執行社員という人)は7年を超えて、当該監査対象の監査を行ってはならないというものです。ただし、2年のインターバルの後、復帰することは認められています。なお、筆頭業務執行社員(通常、監査報告書で一番上にサインする会計士)については、5年でローテーションし、5年のインターバルをおく必要があります。
監査法人自体を7年で替えなくてはならないということにはなっていません。

このローテーション制度の導入趣旨は、様々な粉飾事件や会計スキャンダルの根幹には、会社との長年にわたる癒着や馴れ合いが多く見受けられるため、この関係を是正するというところにあります。確かに、個人的経験でも、3年、5年と同じクライアントに関与していると、会社のビジネスや実態、会計処理上のリスク・問題点などが良く分かってくる一方、油断も出てきます。また、数回の決算を会社とともに乗り切ってきたという「連帯感」が会社との間に生まれ、ともすれば、関与して間もない頃の「まっさらな状態」に比べれば、知らずのうちに会社側に立った物の考え方をしてしまう危険性があります。

もちろん、ほとんどの会計士はこのような状況のなかで、クライアントからの独立性と専門家としての健全な懐疑心を保持して日々業務に臨んでいる訳ですが。

しかしながら、外部の人々から見れば、必ずしもその状況は分からないため、外見的に独立性を明確にするために、7年や5年のローテーション制度が運用されていると言えます。
この継続関与可能期間については7年がいいのか、5年がいいのか、もっと短くすべきなのかの議論や、「監査法人内部でパートナーを入れ替えても、法人ぐるみの不正や粉飾隠蔽を阻止することは出来ないから監査法人自体をローテーションすべきだ」などの意見もあるようです。

これに対して個人的な意見ですが、現行の監査法人内でのパートナーローテーションに付いても一定の独立性保持効果があると考えます。
各パートナーがいろいろな会社での監査経験というバックグラウンドを持っていますので、パートナーが交代した時に新しい目でいままで気が付かなかった問題点やリスクが識別されることもありますし、監査を受ける会社側にとっても「今度のパートナーはどんな人だろう。厳しい人なのかな?」という緊張感がうまれます。

ただし、もう一歩踏み込んでいうならば、クライアントに対しては、新しく関与するパートナーが監査法人内でどのように透明性をもって選定されたかを説明する必要はあるでしょう(既に実行しているところも多いかと思いますが)。
加えて、パートナー以外で、クライアント担当者との関与時間が長く実務面を担う主査以下の監査チームについても同様に、癒着や馴れ合いの危険性が多いと判断されれば、構成員を入れ替えていくことを徹底する方策も必要かもしれません(現状、法律で強制されているのは、業務執行社員のローテーションのみで、主査以下のローテーションは各監査法人内で内規的に取り決めが行われている模様です)。

なお、昔は、いわゆる大先生がローテーションで監査クライアントを離れる際には、自分の影響力が行使しうる部下を関与させ、いわば「院政」を行いながら、インターバル期間後に、業務執行社員として復帰するという動きも多少あったようです。しかし、現在では各パートナーの責任の明確化や関与することのリスク増大の効果もあって、私が知る限りではこのような動きは相当限定的ではないかと考えます(インターバル期間終了後に復帰するといことも意識的に避けていると思います)。

クライアント側の意識も変わってきており、その昔は「うちの会社は○○大先生にサインしてもらっている」という感じで、監査報告書のサインが一つの大きな儀式(例えば、主要役員が一同にそろい、仰々しい雰囲気のなかでサインしていくなど)となっていた時代もあったようですが、昨今、クライアント側の意識にあるのは、大手監査法人の○○から監査を受けているのか、それとも大手以外の監査法人から監査を受けているか、というところにあるのではないでしょうか。

そう考えると、IFRSに移行しようという時でもあり、日本もそろそろ、監査報告書に業務執行社員がそれぞれ個人名で署名することをやめ、欧米のようにファーム(事務所)名でサインするように変える時期ではないかと思います。そもそも個人名でサインすることにこだわっているパートナーの数も少なくなっているのではないでしょうか(余談ですが、サインするパートナー数が多い(3名や4名)クライアントの場合、各パートナーの署名をもらうため、前後の順番を守りながら日程調整するのも大変だったりします)。

また、レアケースですが、基本方針として一定期間経過後に監査法人を変更する(ことを検討する)こと定めており、これによって会社側からも外見的独立性を保持していることをアピールする企業も出てきています(まあ、これは監査法人を入札の形で競わせることによって監査報酬を下げる、または、一定金額に維持する効果を担うという側面も否定できませんが・・)。
この辺りが注目されてくると、当然に、欧米のような厳格性をもって、監査法人自体のローテーションをすべきという声もあがってくるでしょう。

しかしながら、実務に携わる者の立場として言えば、監査法人自体のローテーションについては、いくつかの問題や弊害があります。

(1)監査法人が変わるということは、それまでの会社と監査法人の様々やり取りが一旦リセットされることになるため、会社の実務担当者にとっては、会社の事業概要など一から説明しなければならず、かなり過酷な作業となる。
(2)監査人が変更してしばらくは、監査人側も監査に慣れないため、必要以上に監査時間がかかり、かつ、決算早期化や決算開示資料の精度に悪影響を及ぼす。
(3)監査人は、監査クライアントと監査報酬を協議したうえで報酬をもらっている制度上、ローテーションを目前に控えた事業年度などは、過去の監査時間の超過に起因する赤字を回収する必要が発生し、激烈な報酬交渉になる可能性がある。
(4)ローテーション直近期の監査人の意識としては、次の監査人による監査で何か手続上の問題を指摘・示唆されないよう(直接示唆されることはありませんが、何か問題が発生した時に、当時者(現監査人)であるか否かで対応の困難さが変わってくる)、形式面を重視した必要以上に厳しい監査を実施してしまう可能性がある。

監査法人のローテーションが制度化されると、新しい契約を取るために、本来この種の業務ではなじまない価格競争が行われるでしょう。監査の品質を高めようという流れのなかで、本文ではない営業活動に一定のエネルギーが割かれることは、日本の監査業界にとってマイナスの影響が大きいのではないでしょうか。
また、実務面からも監査法人自体のローテーションを強制することは、現実的に難しいと思い。

仮にこれを実行するのであれば、クライアントから直接報酬をもらうという枠組みを変え、監査対象会社の規模や、費やした監査時間等に応じて、利害関係のないところ(各企業からの監査報酬をプールするような機関)から報酬を受け取るなども施策が前提になるでしょう。
いずれにせよ、クライアント側と監査側双方の実務部隊が相当大変になるでしょうが・・・

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
以上、ローテーション制度にもいくつかの課題は存在していると思われますが、制度が定着しつつある現況を見たり聞いたりしている範囲では、大手監査法人における独立性保持に対しては一定のプラス効果が出ていると考えます。
ただし、これを形式面だけの制度で終わらせず、実質面での効果をさらに高めるためには、監査に携わる個々人の独立性意識の向上が最も重要と言えるでしょう。

次回は、このローテーション制度が中小・中堅監査法人や個人会計士に与える影響と金融庁による規制強化のあたりに触れてみたいと思います。

関連記事は「監査法人ウィングパートナーズに業務停止処分、監査証明した書類に虚偽」です。

最後になりましたが、長年、某クライアントに関与され、ご尽力されたKパートナー、本当にお疲れさまでした!
(今度、自転車ツーリング行きましょう!)
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プロフィール

公認会計士 若松 弘之

Author:公認会計士 若松 弘之
某大手監査法人で監査の最前線に立ち10数年・・・
そこで感じた問題意識を実践するために2008年10月に独立開業しました。現在は、公認会計士若松弘之事務所の代表として、監査だけではない会計関係全般の業務を行っています。
http://www.wakamatsu-cpa.com/

会計や監査にまつわる問題点やコメントを自由な立場から深く切り込んで積極的に発信していこうと思っています。
応援よろしくお願いします。

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