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会計と監査実務の最前線
新聞記事など最新の話題で会計的に気になることを公認会計士・監査人の立場から鋭くコメントします!
05 | 2009/06 | 07
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国際会計基準、15~16年の義務化目標
本日の記事から・・・
「金融庁の企業会計審議会は6月11日、欧州を中心に世界100カ国以上で使われている国際会計基準を日本に導入するスケジュールを盛り込んだ中間報告をまとめ、2015~16年に上場企業の連結決算での義務化を目指す方針を明らかにした。最終決定は12年まで持ち越すものの、義務化を段階的に進めることも検討する。欧米との会計統一を目指す姿勢を鮮明にしたが、国際基準への移行に際し企業は決算作成の手間が重くなる可能性がある。」

国際会計基準、15~16年の義務化目標 金融庁審議会が中間報告

 2015年頃からのIFRS強制適用は、ほぼ予測通りなのでそれほどの驚きはないでしょう。一応、最終決定を2012年まで持ち越すとのことですが、これは強制適用範囲を吟味するという意味だと思います。すなわち、国際的に事業展開していない中堅・ベンチャー上場企業にもIFRSを強制適用するのかという実務的な問題が経済界からあがっているためでしょう。
 また、もう一つの課題として、連結決算はIFRSで作成・開示するとしても、個別(単体)決算をどうするかという点です。
 依然として個別決算には、会社法での剰余金処分計算の基礎及び法人税等の課税所得計算の基礎としての意義があります。
 
 私見ですが、前者については、連結貸借対照表(IFRSでは連結財政状態計算書)における純資産をベースとして、個別財務諸表上の純資産を上回らない程度の制限のもとでの剰余金処分を認めても実質的な弊害が少ないような気がします。市場の株価が今や連結財務諸表の実態を反映している点を鑑みても、株主は連結財務諸表を見ているのですから個別財務諸表にこだわる必要はないのではないでしょうか?この点については、会社法の技術的な改正が望まれます。
 そうなると、やはり重要な問題として残るのが、後者の税務計算基礎としての個別財務諸表の意義です。連結納税法人を除けば、課税対象が個々の法人となっている以上、何らかの形で個別決算を行うことは避けられないと考えます。また、個別決算について一定の適正性を与えるためには、監査法人及び公認会計士による外部会計監査が望ましいことはいうまでもありません(税務当局もそう望むでしょう)。ただし、個別財務諸表が外部開示されないのであれば、これに監査報告書を添付する必要もなく、監査法人側からすれば、監査という手続のみを行うことは理論的ではないため会計監査対象は連結財務諸表のみとせざるを得ないでしょう(現状の四半期報告制度は連結財務諸表に対するレビューですが、考え方はこれと同様です)。
 一方、会社法の問題をクリアできれば、外部への開示は不要となるでしょう。現状、連単比較や個別財務諸表のみに開示が求められている、主な資産・負債の内容(特に有価証券明細表などは有報提出会社がどのような投資有価証券銘柄をどの程度保有しているかを知るうえで非常に有意義です)などを除けば、すでにアナリスト的にはそれほど個別財務諸表を重視していないと思われますので、この個別決算情報が非開示となることについてはそれほど弊害はないかと。

要約すると・・・2015年以降は以下のような状況になるのではないでしょうか。
1.IFRS適用の上場企業においては、会社法においても個別財務諸表の開示(招集通知への添付)は不要となる。当然のことながら、有価証券報告書は連結決算情報のみとなる。
 よって、外部に開示される財務諸表は連結財務諸表のみとなる。
 現状の四半期開示の延長なので、第4四半期+αというイメージですね。

2.税務計算上、個別決算は必要となるが、外部開示対象ではないため、監査(またはレビュー)対象とはならない。なお、実務的な負担を減らす意味でも、連結財務諸表が連結納税の基礎となるような技術的な改善が求められます。また、税務当局においても、連結納税を採用する企業集団を増やすべく、連結納税計算の簡便化や一定の優遇措置などを設ける必要があると思われます。

 これらが浸透すれば、会計及び税務がすべて連結というものさしで測ることができるため、IFRSが全面強制適用となる2015年以降においても、それほど抵抗感なく、これを受け入れられるのではないでしょうか。

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プロフィール

公認会計士 若松 弘之

Author:公認会計士 若松 弘之
某大手監査法人で監査の最前線に立ち10数年・・・
そこで感じた問題意識を実践するために2008年10月に独立開業しました。現在は、公認会計士若松弘之事務所の代表として、監査だけではない会計関係全般の業務を行っています。
http://www.wakamatsu-cpa.com/

会計や監査にまつわる問題点やコメントを自由な立場から深く切り込んで積極的に発信していこうと思っています。
応援よろしくお願いします。

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