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会計と監査実務の最前線
新聞記事など最新の話題で会計的に気になることを公認会計士・監査人の立場から鋭くコメントします!
05 | 2009/06 | 07
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本日の新聞記事から(日経)
「経営の視点『移転価格税制は迷宮か』」日経朝刊9面(企業面)

 本日は財務面には目を引く記事がありませんでしたので、企業面のコラムを取り上げたいと思います。
 経済新聞や経済誌等で、「移転価格税制」という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、一口でいうと、独立企業(資本や人的に支配関係にない企業間)間で取引される価格と異なる価格で関連者(資本や人的に支配関係にある外国会社)と取引が行われた場合、その取引価格が独立企業間価格で行われたものとして課税所得金額を算定する税制です。

 例えば、親が日本の販売会社、子が海外の生産会社のケースで、親子会社間の取引なので、第三者と取引価格よりも安く親会社が子会社から製品を仕入れたとします。その結果、生産子会社には、課税所得がほとんど発生せず、親会社にその分多めに課税所得が発生することになります。
 こうなると、子会社が存在する海外の課税当局としては、「本来、第三者との適正取引価格(独立企業間価格)であれば、自国に法人税を納めるはずだったのに、グループ間で不当に課税所得を移転(海外⇒日本)させた結果、法人税が納付されなかった。これはけしからん、独立企業間価格で取引が行われたものとして課税所得を計算し直して課税しよう!」という動きになります。
 一方、日本の税務当局は多めに納税されているため、そのケースについては文句は言わないかも知れませんが、「確か、別の事例では、日本からその国に課税所得が移転されたことによって、納税が過少になっていたな・・・。」ということもあります。
 そのため、移転価格税制は、「国(課税当局)同士の税金の取り合い」とも言われています。持ちつ持たれつがあるのかは知りませんが、A社の事例では日本に所得が移転し、B社の事例では日本から他国に所得が移転している場合など、政治的にうまく相殺して、互いに税金の受払いを調整することもあるのではないでしょうか・・・。

 国同士は、互いに税金をとった、とられたで争ってもらうのは構わないのですが、割を食うのは移転価格を指摘された企業側です。
 不当に課税所得を調整・移転させた場合は、やむを得ませんが、必ずしもそうとも言えないケース(いわゆる見解の相違というものですが、)も実務的に多いと考えます。私の監査経験からも、どう考えても、あえてリスクをとって所得を移転させるインセンティブはない状況にも関わらず、海外の課税当局から例えば過去3年分の移転価格を指摘されたケースもありました。
 この場合、企業側は一旦、指摘された税金を仮納付することになりますので、二重課税状態になります。そこから自国の課税当局も交えた「相互協議」が始まるのですが、これがなかなか結論が出ないものです。通常、その企業単独では交渉が難しいため、親子会社両国で弁護士やタックスコンサルタントを雇い、多額のコストと時間がかかります。それでも最終的に納得のいく形で和解すればいいのですが、なかなかそのようにうまく行くケースばかりではないというのが実情です。 
 さらに、課税当局から追徴金の納付を指摘された時点で、よほどの勝訴の蓋然性がなければ(通常それを証明するのは無理でしょう)、会計上は費用処理することになっています(従来の会計慣行では、課税当局と係争中の場合、偶発事象として開示することにとどまり、会計上の費用としない方法も見られたが、現状、それでは監査は通りません)。
 
 本日の記事に載っていたホンダの事例は・・・・
「04年に浮上したブラジル事業の移転価格の迷宮から抜け出せないでいる。日本の課税当局に約130億円の追徴金を納税した後、政府間協議を要請したが、両国の協議は06年に決裂してしまった。さらに07年に、日本の国税庁の関連機関である国税不服審判所に審査を請求したが、現在に至るまで結論は出ていない。日本とブラジルに二重に納税したまま、いわば「泣き寝入り」の状態。両国の税務当局の見解がすれ違う以上、ホンダが採れる解決手段はほとんど残されていない。・・・」
というものでした。

 これが事実なら、企業にとっては何とも理不尽なことです。これでは安心して海外展開できません。そのため、近年では、何年も後で移転価格を指摘されることを避けるために、事前に二国間の課税当局と協議し、移転価格と認定されない取引価格を事前設定しておく「事前確認制度(Advance Pricing Agreement, APA)」を採用する企業も増えてきています。ただし、この制度も結構複雑で多段階の手続が必要となるため、通常、大手会計税務事務所の専門アドバイザーとの契約が必要であり、多くのコストと時間がかかるとも言われています。また、一度協議が終われば永久的に認められるというものでもなく、3年程度の単位で、常に協議していかなければなりません。

 IFRSなど会計基準のグローバル化は一歩も二歩も進む状況になったのですから、タックスの世界でも、ぜひグローバル化を進め、適切な事業活動をしている企業の足を引っ張らずに、透明性ある制度にしてもらいたいものです。
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プロフィール

公認会計士 若松 弘之

Author:公認会計士 若松 弘之
某大手監査法人で監査の最前線に立ち10数年・・・
そこで感じた問題意識を実践するために2008年10月に独立開業しました。現在は、公認会計士若松弘之事務所の代表として、監査だけではない会計関係全般の業務を行っています。
http://www.wakamatsu-cpa.com/

会計や監査にまつわる問題点やコメントを自由な立場から深く切り込んで積極的に発信していこうと思っています。
応援よろしくお願いします。

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