fc2ブログ
会計と監査実務の最前線
新聞記事など最新の話題で会計的に気になることを公認会計士・監査人の立場から鋭くコメントします!
07 | 2009/08 | 09
S M T W T F S
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

ニュース記事から(日航再建有識者会議「年金・高給の検証を」)
先週は、少し長い夏休みをもらっており、久しぶりのブログ更新です。

さて、国土交通省は20日、日本航空の経営改善を支援する有識者会議(座長・杉山武彦一橋大学長)の初会合を開いたとのことです。
ニュース概要はこちら

この有識者会議では、JALが再建に向けて策定する経営改善計画について、有識者、国交省、金融機関等がその内容を検証するようです。
先日のコラムでも少し触れましたが、JALは6月末に政府の指導・監督を受け入れる条件で政投銀とメガバンク3行から総額約1000億円の融資枠を獲得したのに対して、ANAは8月に第三者割当増資で1416億円を調達しており、その財務の健全性に一層の格差が生じている状況です。
今回、民間企業であるJALに対して、監督官庁である国交省が経営改善計画策定に深く関与することは、根拠法令などがなく異例のことといわれています。しかしながら、企業の継続性という意味で時間的に待ったなしという深刻な状況を考慮すれば、これも肯ける対応です。

昨日の会議で議論された経営改善計画の主要論点は以下です。
◎路線整理
◎人件費抑制
◎企業年金改革

このなかで、路線整理については、民間企業として生き残りをかけるうえで赤字路線を廃止・減便していくことはやむを得ないことであり、利用者や今まで便益を享受してきた関係者の理解が得られるような形で説明責任を果たして行かなくてはならないと考えます。仮に、公益企業的に一部の赤字路線について利用者からの非難を逃れることを優先するため路線を存続させた結果、企業自体が存続しなくなるような事態に陥っては、より多くの関係者に負担を強いることになります。ここは不退転の覚悟で、路線のリストラを進めざるを得ないでしょう。

会計士の立場から気になるのは、その他の論点である「人件費抑制」「企業年金改革」です。

JALの損益構造でポイントとなるのは、(1)燃料等の原材料費、(2)航空機機体等の減価償却費、そして、(3)パイロット・客室乗務員・地上職員等の人件費(退職者への年金支給含む)です。

(1)については、全世界的な原油の需給動向など、JAL単独の力では制御しにくい部分もあります(ただし、先物ヘッジをするうえでのデリバティブ方針などは重要です)。
(2)についても、既に過年度で調達した航空機については、規則的な減価償却が行われるため積極的に調整できない部分があります。ただし、今後の投資計画や減損損失計上などによって、将来的な減価償却費の抑制を実現することはできるかもしれません。

その意味で、即効性を期待されているのが、(3)の人件費関連の諸施策です。

ただし、ここにも大きな壁が立ちはだかります。
パイロット等の高給抑制となれば、7つとも8つとも言われている労働組合を説得する必要があります。
また、退職年金の給付率(4.5%)を国債利回り並まで引き下げるために、OB含めて3分の2の同意が必要となります。

これらが実現できるかどうかの鍵は、ズバリ
「過去から脈々と引き継がれる企業体質の変革」
ができるか否かではないでしょうか。

仮に、世間的にこれだけ騒がれ、自分の企業が破綻するかもしれない瀬戸際にいるときに、異常ともいえる数の労働組合がそれぞれの利害を主張し、また、過去に高給待遇を受けたであろうOBらについても、自らの既得権益を守るため年金給付水準の引き下げについて「不同意」するような状況に至れば、まさに企業が継続する上での根幹となる「企業風土」はすでに市場に適用できるレベルを逸脱しているといわざるを得ません。
もしこのような状況であれば、GMやクライスラー同様、一旦法的整理されることはやむを得ないと考えます。

余談ですが、財務面で上記以外にも様々な問題を抱えているにもかかわらず、有識者委員が学者や弁護士等で構成されており、ファイナンスや財務会計に精通した実務家(できれば会計士も加わってもらいたいものです)が少ないように見受けられるのが残念です。

いずれにしても、残された時間はそれほど多くありませんので、今後の動向を注視する必要がありそうです。


★ブログランキング参加中★クリックお願いします!
にほんブログ村 士業ブログ 公認会計士へ
にほんブログ村
スポンサーサイト





プロフィール

公認会計士 若松 弘之

Author:公認会計士 若松 弘之
某大手監査法人で監査の最前線に立ち10数年・・・
そこで感じた問題意識を実践するために2008年10月に独立開業しました。現在は、公認会計士若松弘之事務所の代表として、監査だけではない会計関係全般の業務を行っています。
http://www.wakamatsu-cpa.com/

会計や監査にまつわる問題点やコメントを自由な立場から深く切り込んで積極的に発信していこうと思っています。
応援よろしくお願いします。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

FC2カウンター

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

FC2ブックマーク

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード