ブログ再開です。 |
しばらく、ご無沙汰していましたが、仕事も区切りもついたので、心機一転ブログを再開したいと思います。 いろいろ書きたいことはあるのですが、日常業務との両立にとって長文コラムは負担が大きいので、なるべく長続きするよう、短めのトピックをなるべく高頻度で更新していこうと考えています。
以前少し書いたかもしれませんが、現在、自分の中で問題意識または興味を持っているテーマは、「会計と不動産」です。個人的には損益計算も重要と考えていますが、昨今のIFRSの流れを受け、世間的にはやはり「B/S重視」の方向に行っています。 B/Sは「貸借対照表」から「財政状態計算書」に変わることになり、まさに一時点の企業の財政状態、もっと言えば、時価純資産、さらに言えば(言い過ぎかもしれませんが)売却価値、を計算した書類になっていくことでしょう。 そして、損益計算は、2つの財政状態計算書の増減要因を表す計算書という位置付けになり、財政状態計算書のなかでもとりわけ重視される純資産の増減について、包括利益という概念でつなぐことになります。
さて、「B/S重視」の世の中になった時に、もっとも重要性のある資産は何でしょうか? 通常の連結財務諸表であれば、流動資産よりも、固定資産の方が金額的には多いと思われます。 次に、固定資産の中では、有形固定資産(事業用資産)が重要性が高いと思われます。 業種によりますが、有形固定資産の中では、建物、土地等の不動産が多額の資産として計上されることも多いのではないでしょうか。 国交省の統計値として、全法人の所有資産合計1,344兆円のうち、不動産は約490兆円にものぼるというデータがあります。 企業価値を向上させるためにはいくつかの手段がありますが、有効な一手段として「企業不動産の財務戦略」が挙げられるでしょう。
企業不動産を有効利活用しようという話は今に始まったことではなく、従来から企業経営戦略における重要なテーマの一つでしたが、今、あえて公認会計士の立場でこれを主張するのは次の理由によります。
➣IFRSコンバージェンスからアドプションの流れの中で、不動産に関連する会計基準が複数適用されることになっており、その会計基準を企業価値向上と整合的に賢く適用する企業と、そうでない企業の違いが大きくなるであろうこと。
➣これまで企業不動産は含み益があれば決算対策に使え、財務余力がある企業にとっては本業の収益の落ち込みをカバーする「孝行息子」としての投資不動産という側面もありました。また、減損会計においては、特定の事業資産グループの収益力が低下した場合であっても、たまたま簿価の低い土地(例えば、昭和初期の創業当時から保有したいた土地)で事業を行っていれば、正味売却可能価額にその多額の含み益が積算され、その他事業資産の減損をカバーすることにより、結果的に減損損失の計上を先送りできると言うこともあり得たと思います。その観点からは、企業不動産は財務余力の象徴であったと思います。 ところが、資産除去債務や、さらに進んで環境債務の会計処理が導入されたり、各種の環境保護法令が厳格化される状況になれば、企業不動産はまぎれもない「リスク資産」になります。大げさかもしれませんが、時にリスクが顕在化することによって、企業の存続に重大な影響を及ぼす可能性もあります。従って、如何にリスクコントロールを適切に行うことができるかが問われる状況になってきています。
➣企業収益が厳しさに直面している現況下、限られた経営資源を有効活用することは必須の課題ですが、比較的効果が出やすく、その幅も大きいと思われるのが不動産戦略であること。
一つの懸念は、新聞や雑誌等で「CRE(Corporate Real Estate)戦略」というキーワードを目にする機会が増えましたが、主導プレーヤーが不動産会社を中心としているため、その裏に、”CRE戦略=不動産取引の活発化=不動産売買手数料の増加=不動産会社のメリット” という構図が見え隠れしていることです。
不動産を動かすことはあくまで結果であり、それが目的にならないよう、不動産サイドからではなく、会計サイドから不動産戦略を構築していくことに意味があると考えます。
~続きは次回~

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