初心者でも分かる!退職給付会計① |
退職給付会計を理解する前提として、世の中の退職給付制度(平たく言うと、年金プラン)としてどのようなものがあるかを知っておく必要があります。 細かな話まで知る必要はありませんが、大きく次の制度があり、自分達(自社)はどの制度を採用しているのかを把握しておいてください。
(A)-1:確定給付型&外部積立(社外拠出) (A)-2:確定給付型&内部積立(社内留保) (B) :確定拠出型(401kプランなど、外部積立)
結論からいうと、退職給付会計で難しい会計処理が求められているのは、(A)の「確定給付型」の年金制度になります。 そして、(B)確定拠出型については会計処理は簡単です。 企業は加入する年金制度から請求される保険掛け金(例:1,000)を支払う都度 (借) 退職給付費用 1,000 (貸) 現金預金 1,000 と会計処理するだけです。すなわち、損益計算書には費用の増加として記録されますが、貸借対照表にその後の影響を及ぼすものではありません。
一方、(A)確定給付型を採用する企業においては、上記のシンプルな仕訳では済まず、かつ、貸借対照表にも影響を及ぼす処理(オン・バランス)が必要となります。 具体的には、貸借対照表上の「固定負債の部」に「退職給付引当金」という勘定科目が表れることになり、企業はこの年金制度が継続する限り、当該負債の増減を識別していく必要があります。
では、なぜ、(B)確定拠出型が損益処理で済み、(A)確定給付型がずっと貸借対照表上、「退職給付引当金」という負債を引きずらないと行けないのでしょうか?
それは、まさに、(B)は、従業員(退職者)に対して、「あなたは○年勤務してくれたから、××円退職金を支払うよ」という「給付」を、約束(=「確定」)しているからに他なりません。 したがって、たとえ、今まで一生懸命、年金掛け金を積立て、運用した年金資産が、バブル崩壊やリーマンショックに見舞われた結果、目減りしてしまったとしても、企業はその約束を果たす「義務」を負っているのです。
結果的に、年金資産に穴があけば、それは「退職給付引当金」という負債につながり、企業は追加拠出をしてでも、その穴埋めをすることになります。余談ですが、この穴が大きすぎると、JALの破綻事例にように、実質債務超過の一因にもなってしまいます。
これは、従業員の側からすれば、「リーマンショックで自分たちの退職金(年金)の原資になる年金資産が目減りしても、きっと企業が存続する限り、我々との約束は守ってくれる」という安心につながります。
一方、(B)確定拠出型については、企業はその時その時に必要とされる年金掛金を支払ってしまえば、あとは、従業員のみなさんが、その掛金をどのような商品で運用するかを「自己責任」の下に決定することになります。
例えば、リスクを恐れない方は「BRICs新興市場向けの高い成長率が期待できる海外ベンチャー企業の株式に50%投資してくれ」というかもしれませんし、リスクに慎重な方は「国内の優良公社債に多く投資してくれ」という判断をするかもしれません。 この意思決定に対して、企業は何ら「責任」を負わない、いいかえれば、将来的に負担が増すかもしれない義務「負債」を持っていないことになります。
どちらの制度が良い悪いではなく、企業と従業員それぞれが「年金」のあり方をどう考えかということだと思います。 ただし、経営者感覚としては、例えば、本業をがんばり何とか利益が確保できそうだという時に、リーマンショックなどがやってきて、年金資産が吹き飛び、翌年以降の年金掛金負担額が倍増!。結果として、また、赤字に転落ということもあり得ます。 「本業では良い業績だったのに。。。「確定給付型」年金を採用していたばっかりに。。。」という気持ちになるかもしれません。 すなわち、経営管理における不確実性やリスク要因を極力避けるという意味では、(B)確定拠出型を採用する(移行する)という戦略は1つの選択肢になるでしょう。
この当たりの関係を表したスライドは以下を参照してください(クリックで拡大)。

次回は、では現行の退職給付会計基準が導入される以前はどのような会計処理だったのか?そこにどんな問題があったので、現行退職給付会計基準が適用されるようになったのか?という点について、ご説明したいと思います。
★ブログランキング参加中★クリックお願いします!
 にほんブログ村
スポンサーサイト
|
|
|
|
|
|