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会計と監査実務の最前線
新聞記事など最新の話題で会計的に気になることを公認会計士・監査人の立場から鋭くコメントします!
11 | 2023/12 | 01
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IFRS適用の高い壁!
本日は、これからIFRS適用に向けてプロジェクトを立ち上げようという企業や関係者に向けて、実務的な部分で直面する壁についてコメントしたいと思います(案外、ボリュームがあるので複数回に分けるかもしれません)。

現在、私は外部コンサルの立場で、とあるIFRS導入プロジェクトに関与していますが、その中で感じている壁があります。これはある程度どの企業にも当てはまることなのでは、と思います。

それは、J-SOXプロジェクトとIFRSプロジェクトの性質の差に起因した人的リソースの問題です。

双方のプロジェクトとも、まずは専任者のいるプロジェクトチーム(以下、PT)を設置するところからスタートし、そのプロジェクトのフェーズ進捗管理が重要とされています。J-SOXについては、3月決算会社はこの6月末までに導入初年度の監査報告が終わっており、一段落ついています。以前の記事に書きましたが、最後は何となく「消化試合」のようになってしまいましたが、その中でも順調に進んだ企業においては適切なPTが存在し、経営者や内部統制委員会(または取締役)及び監査人と適宜コミュニケーションをとれていたと感じています。
では、J-SOXにおいてどのような人材がPT構成員になっていたかといえば、比較的多かったのは内部監査室や監査部の人員ではないでしょうか。また、以前、本社財務や経理部門を経験し、その後、事業部アカウンティング責任者や子会社の間接部門トップとして幅広い業務を横断的にこなせる人材が抜擢されるケースもあったと思います。

ここで大事なポイントは、J-SOXプロジェクトの構成員になりうる人材は比較的人選の余地が多かったということです。
監査部や内部監査室の人員は比較的融通が効いた(通常業務として内部監査がものすごく忙しく、人員リソースもめちゃくちゃタイトだ、という話はあまり聞かないでは)ため、J-SOXに専任することができたとも言えます。
誤解を恐れずにいうならば、J-SOXプロジェクトがこれらの部署の仕事を作る一方、この方々もJ-SOXプロジェクトに従事することで、初めて社内でのプレゼンスを発揮する機会が与えられた面もあります。では、J-SOXプロジェクトが一段落着いた今、これらのPTの方々の行き場は・・・という点が気になりますが、それはさておきとしましょう。

では、IFRSプロジェクトにおいては,この点いかがでしょうか?
IFRSプロジェクトをマネージできる社内の人材として必要な要件は、ざっと考えただけでも以下のとおりです。
・財務会計に高度な専門知識があること
・J-GAAPとIFRSの違いをある程度理解していること(ギャップ分析を感覚的に把握できること)
・海外事業部や海外子会社とのやり取りを含め一定の英語力があること
・実際のビジネスや事業状況を理解しており、経営的な観点で物事を捉えられる人
・監査人と適切なディスカッションができること(理論を押し通すだけでなく、政治的かつ実務的な着地点を見いだす力)


しかも、四半期報告制度が適用されている今となっては年中決算という状況にもなっていますので、日常の経理・決算業務に忙殺されておらず、IFRSプロジェクトに相応の時間を割けることが求められます。

どうでしょうか?少し考えただけでも、そんな人材が、おいそれと見つかることはまず期待できないでしょう。
仮に上記の要件を満たす有能な人材は、経理・決算業務に忙殺されているのが世の常ですから、その人を無理矢理現状の業務から引きはがし、IFRS専任とするのはかなり勇気のいることではないでしょうか。


そのため、実務的な落としどころとしては、マネジメントがその有能な人材を何とか説得し、通常業務を多少軽減したうえで、IFRSプロジェクト兼任になってもらうというところです。
また、足りない人材リソースを外部のコンサルや派遣で補えるかというと、確かにJ-SOXの時は、そのような外部人員がフローチャートやリスクマトリクス3点セットなどをある程度、機械的に文書化する作業を分担(または丸投げ)することができました。

しかしながら、「原則主義」のもとで事業の実態に精通した人材による深い検討と判断が求められるIFRSプロジェクトにおいては、簡単に外部の人員がサポートできる状況にはありません。基本的には主体的に動くのは、その企業の会計処理や会計方針と事業実態を十分理解した社内リソースであり、あくまで外部の人間はそれを側面援護射撃するにとどまるような気がします。

かなり規模の大きいグローバルな企業においても、IFRSプロジェクトを適切にマネジメントできる専任者を確保することは容易ではないといえるのではないでしょうか。
ましてや中堅規模の上場企業においては、コスト削減の大号令のもとで間接部隊を減らされ、通常の経理・決算業務だけでも青息吐息の状況に加え、このうえIFRS専任者を出すことなど非現実的とも言えます。

そこで。。。。今から間に合う施策としては、多少時間を割いて、社内でIFRSトレーニングを繰り返し実施することによって、上記の要件を満たすPT人員候補を少しでも多く育成する土壌を作ることではないでしょうか。個人的見解ですが、やはり何といってもIFRSに対する深い理解と知識が、実際にJ-GAAPからIFRSに移行する段においては重要なアシストになると思われます(実際にコンサルをしていて、ひしひしと感じます)。

まだ、本番まで3年程度は残されているので、社内人材の育成は、今からでも十分効果があると考えます。
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プロフィール

公認会計士 若松 弘之

Author:公認会計士 若松 弘之
某大手監査法人で監査の最前線に立ち10数年・・・
そこで感じた問題意識を実践するために2008年10月に独立開業しました。現在は、公認会計士若松弘之事務所の代表として、監査だけではない会計関係全般の業務を行っています。
http://www.wakamatsu-cpa.com/

会計や監査にまつわる問題点やコメントを自由な立場から深く切り込んで積極的に発信していこうと思っています。
応援よろしくお願いします。

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