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会計と監査実務の最前線
新聞記事など最新の話題で会計的に気になることを公認会計士・監査人の立場から鋭くコメントします!
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ドラクエ販売好調!!
前回のブログで、ドラクエの発売に関連してゲーム・コンテンツ企業の再編や、発売元のスクウェア・エニックス・ホールディングス(以下、「スクエニ」)社の財務状況を簡単に振り返ってきました。そこでは、同社にとって今回発売したドラクエ9にかける期待の高さが垣間見られました。

昨日(7/14)の日経新聞にこんな記事が出ていました。
「【とっつきやすい」 まとめ買い、家族と】
 11日に発売されたゲームソフト「ドラゴンクエスト9」の出足が好調だ。ゲーム専門の出版社によれば2004年の前作以上で、購入層は若いゲームファンだけでなくしばらくゲームをしていなかった中高年にまで及ぶ。家族と一緒に遊ぶため複数本をまとめて買う人もいる。頭打ちのゲームソフト市場で突出した売れ行きとなっている。
 ゲーム専門誌発行のエンターブレイン(東京・千代田)は13日、ドラクエ9の11~12日の推定販売本数を234万3440本と発表した。同社によれば、490万本を売り上げた前作「ドラクエ8」の発売2日間は223万7000本だったので、それを上回るペースとなっている。
 好調な出足を支えているのが、最近ほとんどゲームをしていなかった人たちだ。発売初日である土曜の午後、日本経済新聞がヨドバシカメラ新宿西口本店(東京・新宿)とビックカメラ池袋本店(東京・豊島)で66人の購入者に無作為に聞いたところ、18人が「1年以上、ゲームソフトを買っていない」と答えた。」


どうやら、スクエニ社の思惑通り、出足は好調のようですね。第2四半期決算が楽しみです。

さて、前回に引き続きですが、
スクエニ社の直近2009年3月期の有価証券報告書(ここからDLできます)を眺めていて気になったポイントの残りを解説します(1~3は前回参照下さい)。

1.最近5年の連結業績推移サマリー
2.主たる連結子会社は?
3.事業の種類別セグメント情報(特に営業利益率に着目!)
(ここまでは前回のコラムで)

4.ゲーム業界特有の会計処理(開発仕掛り中の案件やソフトウェアの在庫の評価は?)
5.貸借対照表の特徴(流動・固定分類など)
6.損益計算書の特徴(売上原価・販管費の比率など)
7.キャッシュ・フローの状況と手許キャッシュの水準
8.新会計基準「工事契約に関する会計基準」(平成21年4月1日以後開始する事業年度から強制適用)の影響は?
9.英国Eidos社の買収による国際市場への本格参入

4.ゲーム業界に限った話ではありませんが、ソフトウェアやプログラムを開発する企業に共通な会計処理として、その開発費や原価計算をどのようにするかという論点があります。
すなわち、ゲームやコンテンツの制作については、「どこまでを研究開発活動として費用処理し、どこからを量産・制作活動として資産計上するか?」という問題があります。この辺については、以下のとおり各種基準・指針が公表されていますのでこれに従って会計処理することになります。
「研究開発費等に係る会計基準」企業会計審議会 平成10年3月
「研究開発費及びソフトウエアの会計処理に関する実務指針」日本公認会計士協会会計制度委員会報告第12号 平成11年3月
「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A」日本公認会計士協会 平成11年9月

これらの業種の財務諸表で見かける特殊な勘定科目としては、「ソフトウェア仕掛品」や「制作原価支出金」など開発、制作中の原価を資産計上する流動資産項目が挙げられます。これはいわゆる一般企業でいう棚卸資産の仕掛品と同じです。
スクエニ社においても、連結貸借対照表のなかで「コンテンツ制作勘定」が21/3期で183億円計上されています。このうち多くの金額はドラクエ9の開発に要している金額と思われます。
なお、この手の業種で留意すべきは、これら制作途中として資産計上している原価や、販売中の商品について、適切に評価減しているかどうかということです。ご承知のとおり、ゲームソフトなどは非常の鮮度の高い(腐りやすい)品物ですので、リリース後の商品はもちろん、場合によっては開発中の仕掛品についても、当初の見込が外れ生産本数を縮小したり、他社が同種の商品を先にリリースし競争力が低下したりなどによって、明らかにコストが回収金額を上回ると予想されることがあります。この仕掛在庫は、工事・建設業でいうところの赤字受注物件と同じ取扱いが求められますので、一定の評価減を要します。
スクエニ社の有価証券報告書を見ると、67ページ、会計方針のたな卸資産のところで
「コンテンツ制作勘定・・・個別法による原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)」と書いてあります。これは同事業年度から強制適用となった棚卸資産の評価に関する会計基準の一般文言ですが、その結果として、74ページに売上原価処理した評価減金額が53億円であった旨が記載されています。
このうち、いくらが在庫商品から発生し、いくらがコンテンツ制作勘定から発生したものかは定かではありませんが、かなり大きな金額ですね。

5.B/Sの特徴としては、メーカー等の装置産業とは異なり、労働集約的な業種になりますので、流動資産が固定資産に比べてかなり大きくなります。スクエニ社は、タイトーを買収する際に200億円近くののれんを計上したようですので、20年償却による、残額177億円が大きな金額として計上されています。20年償却は他社に比べても長い感じがします。しかも、タイトーが主として行っているアミューズメント事業の動向を踏まえると、こののれんについて減損損失を計上せざるを得ない日は遠くないかもしれません。

6.P/Lはさほど特徴が有る訳では有りませんが、販売費及び一般管理費のうち広告宣伝費の比率が多いのが分かります。SMAPなどを起用したドラクエ9関連の広告宣伝費は多額と思われますが、これは売上に対応させる会計処理を採っているならば、支出金額は前払費用などに資産計上されており、売上が計上される、第2四半期に費用処理されるものと思われます。

7.キャッシュ・フローですが、1,000億円前後を推移しており、かなり手許キャッシュは厚い状況です。というのも、リスクの高いプロジェクト案件を手がけ、人件費支出が多く、かつ固定資産がそれほど大きくないため減価償却による営業キャッシュ・フローが期待できないこともあり、業績不振時や、有事に備えるためのキャッシュは厚めにせざるを得ないのかもしれません。
任天堂はキャッシュリッチの代表格ですが、一般的にゲーム・コンテンツ産業はキャッシュを厚めに持っているようです。

8.新会計基準では、建設・不動産業においては、工事進行基準が強制され(一部除外要件あり)、IT・ソフトウェア産業についても準用されています。従って、受注ソフトの開発等についても、たとえ納品が完了していなくても、開発の進捗状況に応じて収益を認識していくことになります。
スクエニ社においては、受注販売というより、見込販売が多いと思われますので新会計基準適用の影響は限定的と思われます。

9.94ページ、重要な後発事象に記載されていました。
約122億円かけて、イギリスのゲーム会社を買収するというものです。
国内市場においては、なかなか市場拡大が望めない状況なので、如何に海外展開をするかは同社にとって喫緊の課題となっており、投資家からも手ものキャッシュの有効活用による企業価値の向上を求められているところの一つの施策と考えます。ただし、これがうまく行くどうかは今後の注目です。
詳しくは、スクエニ社の決算説明会資料を参照して下さい。

以上、簡単に分析しましたが、再編が進んでいるなか、生き残りをかけ各社それぞれの事業戦略を練っている状況でもあり、今後とも目が離せない業界だと思いました。

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プロフィール

公認会計士 若松 弘之

Author:公認会計士 若松 弘之
某大手監査法人で監査の最前線に立ち10数年・・・
そこで感じた問題意識を実践するために2008年10月に独立開業しました。現在は、公認会計士若松弘之事務所の代表として、監査だけではない会計関係全般の業務を行っています。
http://www.wakamatsu-cpa.com/

会計や監査にまつわる問題点やコメントを自由な立場から深く切り込んで積極的に発信していこうと思っています。
応援よろしくお願いします。

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