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会計と監査実務の最前線
新聞記事など最新の話題で会計的に気になることを公認会計士・監査人の立場から鋭くコメントします!
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民主党政権になると・・・
本日(7月23日)日経新聞朝刊【経済1】面から
「従業員代表、監査役会に ~公開会社法案、民主が概要~」
という記事についてコメントします。
(記事の概要)
民主党が次期衆院選のマニフェストに盛り込む新法「公開会社法」案の概要が明らかになった。以下はその概要。
①上場会社が対象で、監査役会や監査委員会に従業員代表を起用する
②親会社の株主が子会社役員に対しても損害賠償を求める株主代表訴訟の提起権を認める
③親会社や大口得意先、株式の持ち合い関係にある企業の出身者、取締役の親族などは社外取締役としては認めない
監査役を置く企業では、会計監査人の選任議案や監査報酬の決定権を現在の取締役会から、監査役会に移す
⑤子会社が重要資産を売却するなど重大な意思決定をする際は親会社の株主総会での承認を求める
⑥子会社の取引先などの債権者が、親会社やその取締役に対して損害賠償を請求できるようにする
⑦持株会社などの親会社の株主が事業子会社の取締役などに株主代表訴訟を起こせるようにする


公認会計士として気になったのは④です。この案については、先の6月20日に日本公認会計士協会からも同じような趣旨の文書が法務大臣宛に提出されています(こちらを参照)

政権が民主党に移り、④の案が実現されれば、監査のあり方も大きく変わる可能性があります。日本公認会計士協会が要望したり、民主党がマニフェストに盛り込む背景には、現状、監査を受ける立場である経営者側が、監査する側である会計監査人を選任するだけでなく、その報酬まで決定(交渉の結果)できるねじれ現象の解消があります。

確かに、これが実現すれば監査人の独立性という観点からは一歩前進という気がするのですが、実務の立場からは手放しには喜べない点にも留意する必要があるのではないでしょうか。
それは、そもそも監査役会が、取締役会から独立した立場にあり、意思決定が専門的見地から客観的・的確に実施されるか否かという問題です。

日本の監査役会にありがちな、プロバー従業員及び旧取締役からの監査役横滑りでは、経営者にモノを言う組織とはなり得ません。また、社外監査役についても、お飾り・名誉職の人を人数合わせで置くのではなく、法律・会計等の専門的知見やビジネスに対する洞察を兼ね備えた人材を適切に登用して初めて、監査機能が得られることになります。

最も懸念されるのは、実際に会計監査の現場に直面することがすくない監査役会が、監査に要する必要時間やコストに対する理解がないまま、「監査報酬が高すぎる、別の監査法人含めて入札にしよう!」などという方向にで活気づいてしまい、単に監査報酬という一面で会計監査人が短期間で変更されることがトレンドになれば、監査の品質の低下は避けられないでしょう。

今後ますます監査役会の意義と責任が重くなることは言うまでもないでしょう。

懸念はあるとしても、やはり期待できる点も大きいです。
監査役と会計監査人の関係や提携が密接になれば、会計監査に対する理解や経営陣に対する監視機能が強化され、コーポレート・ガバナンスの向上につながることでしょう。

「いやー、我が社の厳しい業績を見れば、監査報酬の値上げなどもってのほかですよね」と取締役から釘をさされるという、ありがちな監査報酬交渉の光景は減るのでしょうか。。。。

もし、監査役会から同じ趣旨の発言があれば、やはり、「本当に経営者側から独立しているんですか?」と言いたくなりますね。

また、従業員代表の監査役は、実際にどの程度、ガバナンス向上に機能するのか?という気もします。そもそも、経営者から給与をもらっている従業員が経営者にモノを言うことができるのでしょうか??
この点は、監査役の報酬や選任議案についても、現実的に経営陣が決めている状況を鑑みれば、その独立性にクエスチョンがつくのはおわかりだと思います。

ただし、これらの問題提起を含めて、監査やコーポレートガバナンスについて幅広く議論されるのは、間違いなくプラスだと考えます。

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プロフィール

公認会計士 若松 弘之

Author:公認会計士 若松 弘之
某大手監査法人で監査の最前線に立ち10数年・・・
そこで感じた問題意識を実践するために2008年10月に独立開業しました。現在は、公認会計士若松弘之事務所の代表として、監査だけではない会計関係全般の業務を行っています。
http://www.wakamatsu-cpa.com/

会計や監査にまつわる問題点やコメントを自由な立場から深く切り込んで積極的に発信していこうと思っています。
応援よろしくお願いします。

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