これだけは読んでおきたい報告書!! |
会計制度委員会研究報告第13号 「我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告) -IAS第18号「収益」に照らした考察- 」 平成21年7月9日 日本公認会計士協会 (PDF資料はこちら)
すでに実務家の皆さんにおいては認知されているかと思いますが、今後、IFRSの適用(採用:アドプション)を目指す上で、避けて通れない「収益認識」の論点について、ついに我が国の会計基準においてもメルクマールとなる報告が公表されました。 本報告が公表されるまでは、収益認識に関する会計処理についてはは、一部の建設業・工事取引やソフトウェア取引を除き、企業会計原則の実現主義のみが実務の指針となっていました。 企業会計原則においては、一般に「財貨の移転又は役務の提供の完了」とそれに対する現金または現金等価物その他の資産の取得による「対価の成立」の二つが収益認識要件とされていると記述されているのみです。 さすがにこの概念的な記述だけでは実務において複雑で多種多様な取引の会計処理を判断する上で辛いモノがありました。
個人的にも売上の会計処理という企業会計の根幹を支える部分が、会計基準や実務指針のうえでスッポリ抜けているような感を抱いていました。 逆に言うと、判断を要する収益取引が発生した場合、他社例や過去の慣例、他国の会計基準等を参考に、会計士が専門的判断を行ってきた部分でもあります。 従って、場合によっては、同一環境下の同種取引であっても、個々の会計士判断によって、会社別に異なる収益認識処理が採られている可能性もあります。
このような背景から、企業の経理担当者や会計監査人からは、より実務に根ざし実際の取引事例等を多く盛り込んだ指針の公表が待望されていました。 当報告を作成した日本公認会計士協会の会計制度委員会では平成19年12月に収益認識検討のプロジェクトチームを設置して、約一年半かかり、全148ページにも渡る大作のリリースの漕ぎ着けました(F委員長、大変にお疲れ様でした。今度、苦労話を聞かせてください)。
私も詳細には目を通し切れておりませんが、ざっと見たところ、かなり多くのモデルケース(67ケースを収蔵)が盛り込まれ、現状、研究報告という位置付けのため、会計基準としての強制力はないものの、企業と監査人が収益認識について議論するうえで、間違いなく論点を整理するものとして活用されるものと考えます。 議論の流れとしては、日本基準の現行実務とIAS第18号「収益認識」を比較した上で、我が国の実務慣行も考慮したあるべき指針を提示しています。
最終的には2015年以降のIFRS強制適用を念頭におけば、いきなりこの時点でハードランディングするのではなく、 そこに至る事前準備段階として、現行、日本基準適用下においても収益認識の会計処理を見直す企業は自主的に会計処理を変更すべき(それが2015年のソフトランディングにつながる)と思われます。
なお、本報告の位置付けに関して、少し長い引用になりますが、重要な部分なので以下参照ください。 「2.本研究報告の位置付け 本研究報告は、当協会会員の業務の参考に資するものである。 したがって、本研究報告の公表により、収益認識に関し、これまでの実現主義の解釈の下で認められてきた会計処理から本研究報告に記載された会計処理への変更が強制されることはない(注)。 (注)本研究報告は、同一の取引及び事象について、特定の会計処理の採用を強制するものではなく、本研究報告公表後においても他の会計処理を任意に選択する余地がなくなるわけではない。このため、本研究報告に記載された会計処理を採用しても「会計基準等の改正に伴う会計方針の採用又は変更」には該当しない。 企業が本研究報告に記載された会計処理を任意で新たに採用するに当たっては、その実態により、現行の実務と同様、以下の2つのケースが考えられる。 ①複数の会計処理が認められている場合の会計処理の変更 ②契約形態の変更等による新たな事実の発生に伴う新たな会計処理の採用 ①に該当する場合には、会計方針の変更9に関する「正当な理由」(「適時性」を含む。)が求められることになる。なお、「適時性」を判断する上で、本研究報告の公表が背景の1つとなるのではないかとの意見がある。 一方、②に該当する場合には、会計処理の変更に該当せず、追加情報として取り扱われることになる。」
赤字箇所がポイントですが、本報告が出てすぐのタイミングであれば、本来、会計方針変更の正当な理由として実務的に記載のハードルが高い「適時性」(会計方針を変更するのは分かるけど、なぜ、当期に変更する必要があったのか?)については、「本報告の公表を契機」とすれば放免するというように読めます。 薄々、現行の収益認識基準が実態から逸脱していると分かっていながら、会計方針を変更するタイミングがなかった企業にとっては、またとない好機ではないでしょうか。
個人的見解ですが、本報告に従うならば、影響が大きそうなポイントを記載します。 *********************************************************** ①実態として複合取引(物品(ハードウェア)+保守、研修など(ソフトウェア))であるものの、IT・ソフトウェア業界ではないため、一括収益認識を行っている企業においては、今後、異なる要素を合理的に公正価値測定して、それぞれ別個の収益認識を求められる
②日本の会計慣行や風土においては、売上高よりも利益が重視される傾向が強く、今まで、売上高の総額・純額処理について厳密に議論されてこなかった面がある。しかしながら、欧米においては、売上高が企業業績評価において、利益と同等以上に重要な指標になることも多く、総額・純額処理については厳格な適用を求められてきた。この考え方が本報告においても取り上げられており、これに従うのであれば、相当数の事業、企業において、総額→純額への変更が必要となるのではないか? 特に、商社や百貨店などを筆頭に、問屋・手数料商売を行っている企業は多く、仮にこれらが純額となれば、売上高は激減(多くても、現行売上高の10%程度まで減少)するものと考えられる。
③現行、大多数の企業で採用されている出荷基準として収益認識されている部分については、厳密には、先方引渡し又は検収基準への変更を求められるが、出荷~引渡のタイムラグが短く、所有権移転リスクも高くなければ、影響は限定的と考える。 ***********************************************************
以上、まだまだ読み切れていませんので、しばらくして、第2弾をコメントしたいと思います。
繰り返しになりますが、企業会計の実務に何らかの形で携わる方は、是非、ご一読するべきと思います!!
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