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会計と監査実務の最前線
新聞記事など最新の話題で会計的に気になることを公認会計士・監査人の立場から鋭くコメントします!
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経理マンの「引出し」と「ハンドリング」
引き続き、経理業務の付加価値についてコメントします。
経理マンのハンドリング部分として、具体的な会計処理を挙げるとすれば以下の5項目です。

①繰延税金資産の回収可能性の判断
②固定資産の減損会計
③退職給付会計
④非上場株式の減損判断
⑤のれんの償却年数と減損判断

以下、簡単にご説明します。
①繰延税金資産の回収可能性の判断
これは、課税所得水準が下がり、または、マイナスとなり、繰延税金資産を評価性引当するかどうかの局面が腕の見せ所となります。ざっくばらんに言うと、繰延税金資産を上げるにせよ、落とすにせよ、ある程度の水準までは会社の意思が反映される(反映できる)ということです。
会社が作成する翌期以降の事業計画・経営計画がきちんと内部の役員会の承認を経たものであり、一定の合理性が確保されていれば、監査人はそれを真っ向からは否定できないというのが本音です。

さらに、監査人にとって悩ましいのが、業績が悪化して、一旦、全額、繰延税金資産を取崩した会社において、課税所得水準が回復基調に入った時に、「いつ繰延税金資産を差異計上するか」という問題です。経営者は、またいつ「取り崩せ」と言われるか分からない繰延税金資産を積極的には資産計上しようとは思いません。強いて言えば、回復基調が株主の間でも信頼性をもって評価され、実際に株価が回復したきた段階まで待ってから、いわば「駄目押し」的に、繰越欠損金に係る繰延税金資産を一括計上し、税金費用のマイナス(当期純利益効果)を計上したいと思うのが自然な考え方です。
しかしながら、監査人の立場からは。そこまで引っ張ることはできず、回復基調に入り、翌期以降の課税所得の確実性が見えた段階でそれまで引当していた繰延税金資産を計上すべき、と言わなくてはなりません。これは結構「しびれます」・・・。

なぜなら、資産計上すべしと言った途端に、業績が再悪化してしまった場合には、再度、繰延税金資産の取崩しが必要となり、当期純利益をいたずらに増減させてしまう結果になります。
投資家の立場からは、「監査人が繰延税金資産計上すべきと言ったタイミングが早すぎたために、意思決定がミスリードされた」といわれてしまうかもしれません。

話がそれてしまいましたが、繰延税金資産の計上に関しては、監査人としては、業績が悪化して、それまで資産計上していたものを「取り崩せ」というのは精神的に強く言えることが多いのですが、積極的に「資産計上しなさい」というのはなかなか言えないものです。その意味からも、「会社が過度に保守的ではない」と言えるのであれば、その計上時期と計上額は、ある程度は会社の裁量に任されると言えなくもありません。

少し長くなってしまいましたので、その他の論点は次回にまわします。
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プロフィール

公認会計士 若松 弘之

Author:公認会計士 若松 弘之
某大手監査法人で監査の最前線に立ち10数年・・・
そこで感じた問題意識を実践するために2008年10月に独立開業しました。現在は、公認会計士若松弘之事務所の代表として、監査だけではない会計関係全般の業務を行っています。
http://www.wakamatsu-cpa.com/

会計や監査にまつわる問題点やコメントを自由な立場から深く切り込んで積極的に発信していこうと思っています。
応援よろしくお願いします。

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