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会計と監査実務の最前線
新聞記事など最新の話題で会計的に気になることを公認会計士・監査人の立場から鋭くコメントします!
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減損会計は決算に対する企業姿勢の縮図
前回は繰延税金資産について触れましたが、今回はそれ以上に経理マンのハンドリングが効く「固定資産の減損会計」についてです。
なぜ、減損会計が繰延税金資産以上なのかと言えば、極端な話、明らかに業績が不振で誰がどう見ても巨額な減損損失が計上される場合を除けば、減損損失を計上するか否か、また計上する場合、いくら計上するかについては、ある程度会社の意思が通るからに他なりません。
減損損失の計上の用品または金額の測定に至るまでは、大きく言うと、4つのポイントがあります。
①グルーピング
②減損の兆候
③割引前将来キャッシュフローの積上げ
④割引率の設定

①グルーピングについては、「今年は減損損失を保守的に計上するため、グルーピングを変更しよう。」というように簡単な話にはなりません。グルーピングを変える場合、会計方針の変更となり、正当な理由が求められます。
ただし、減損損失をより計上する方向でグルーピングを細かくする方向については、正当な理由になることも多く、監査上も無下に止めない雰囲気もあります。

②減損損失の兆候については、実務的には、「過去2年連続での営業損失または営業損失キャッシュフローのマイナス+当期も営業損失かどうか」で判断されます。
ただし、こちらについても過去2年連続赤字ではないにも関わらず、「この事業を取り巻く環境が大幅に悪化しており、採算が取れなくなっている」状態が今後も続くという会社判断であれば、監査上、減損の兆候ありとしたものを否定することはまずないでしょう。

③以降の論点については次回に回します。

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コメント
福島第1原発5、6号機の減損は?
初めまして。Budgieと申します。
会計士受験生(合格発表待ち)です。
タイトルににある通り、東京電力の前期の有価証券報告書で
東京電力福島第1原発5号機6号機に減損損失が計上されていないことに疑問を感じています。
 取締役会決議で廃炉が決定した1~4号機は減損が計上され、簿価ゼロまで切り下げられていますが、同5、6号機は扱いが未定であるということで減損が計上されていません。
確かに、技術的には5、6号機は再稼動が可能かもしれませんが、5月に東京電力がメルトダウン(が起こっていたこと)を認め、東電、政府に対する不信が高まった現在の社会状況、福島第1原発周辺の環境を考慮すれば、再稼動は事実上不可能だと思います。
稼動せず、発電しない以上、発電所がキャッシュを生み出すことはなく、投資を回収することはできません。
したがって、減損損失を計上するものだと思いましたが、減損会計に対する私の考えが間違っているのでしょうか?
以上、長文失礼しました。
[2011/10/07 15:52] URL | Budgie #- [ 編集 ]


Budgieさん、はじめまして。
仰る通りかと思います。5,6号機についても、損傷がひどく、誰の目から見ても、福島で原発が再稼働するとは思えません。したがって、3月末日時点で、減損(というよりは廃棄処理)が妥当でしょう。技術的な僅かな再稼働可能性のみで、資産価値を温存することは財務諸表利用者をミスリードします。
推測するに、決算発表した5月下旬?頃は東電に当事者能力がなかったでしょうから、東電も監査人も、確定していないことで、かつ、将来企業の不利益になることは、できるだけ「触りたくない」ということだったんではないでしょうか。ところで、状況が明らかになりつつある第1四半期では処理したのでしょうか・・・。
[2011/10/12 00:32] URL | 若松 #- [ 編集 ]

回答ありがとうございます
ご回答ありがとうございます。
四半期報告書を見たところ、第1四半期でも減損損失は計上されていません。注記もありませんでした
なお、第2原発も処分が未定という理由から、何ら処理されていません。
こちらは技術的に修復可能かもしれませんが、何よりも福島で原発を再稼動させることが社会的に不可能だと思います。
また、現在稼動しておらず、そしてこれからも稼動する見込みがないことが明らかであるのに、減損が計上されていないことについては、財務報告上の問題に加え、現在の電気料金の算定上でも問題があると思います。
現在の、総括原価方式に従えば、5、6号機、第2原発の減価償却費が原価として、帳簿価額に一定割合を乗じたモのが事業報酬として電気料金を構成するからです。
全体に与える影響はどの程度か分かりませんが、これらが電気料金を構成するのは理不尽に思われます。
[2011/10/12 01:55] URL | Budgie #- [ 編集 ]

お読みになったかと思いますが・・・
Budgieさん、
本日の日経に同じ指摘がありましたね。会計の面でも、やはり普通の感覚を持つことは大事です。

以下、引用*****************
(東電調査委報告書から)(5)廃炉4基のみ、甘い試算
2011/10/13付日本経済新聞 朝刊
 東京電力に関する経営・財務調査委員会(委員長・下河辺和彦弁護士)の報告書は福島第1原発1~4号機の廃炉費用を1兆1510億円と見積もった。損失に備えて引き当て済みの分を除くと、東電は4700億円を引当金に追加計上する必要があるとした。
 試算の内訳は、事故を起こしていない通常の状態の廃炉を想定した費用1867億円と、今回の事故で新たに必要となる8950億円の追加部分などに分かれる。
 追加部分は、事故収束に向けた工程表の第2段階(ステップ2)の終了までの費用が2650億円。その後、3年程度の「中期的課題」の期間についても、米スリーマイル島事故などを参考に、原子炉内の燃料の取り出しなどに6300億円かかると試算した。
 ただ、事故収束まで予定通りに進むかは不透明だ。中期的課題で取り組む汚染水処理などは「不確実性も高く、廃炉費用の拡大リスクも高くなる」と指摘している。
 今回の試算は放射性廃棄物の中間貯蔵や最終処分にかかるコストを含んでいない。東電が廃炉の意思決定をしていない福島第1原発の5~6号機、福島第2原発も試算の対象外だ。
 枝野幸男経済産業相は「(存続に)地元の理解が得られるとは思わない」と、福島第1、第2のすべての原子炉が廃炉になるとの見通しを示している。廃炉費用が試算より膨らむ可能性は否定できず、東電の経営を圧迫する要因となりそうだ。
 一方、事故被害者への損害賠償費用は、除染など一過性の損害賠償費用を2兆6184億円と試算。営業損害など毎年生じる賠償費用は初年度1兆246億円、次年度以降は年8972億円と見込んだ。原子力損害賠償支援機構による公的資金を使った資金援助の対象だが、実際の賠償額がどこまで膨らむかは依然として見えない。
[2011/10/13 13:23] URL | 若松 #- [ 編集 ]

経営・財務調査委員会報告書
若松様
昨日の日経記事は私も読みました。
また、日経記事で取り上げられている報告書もざっと目を通してみました。
(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keieizaimutyousa/dai10/siryou1.pdf)
(試算が甘いと書かれている)調査委員会でも、5号機6号機は減損処理の必要性があると考えているようです。(83ページ)

[2011/10/14 21:04] URL | Budgie #- [ 編集 ]


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プロフィール

公認会計士 若松 弘之

Author:公認会計士 若松 弘之
某大手監査法人で監査の最前線に立ち10数年・・・
そこで感じた問題意識を実践するために2008年10月に独立開業しました。現在は、公認会計士若松弘之事務所の代表として、監査だけではない会計関係全般の業務を行っています。
http://www.wakamatsu-cpa.com/

会計や監査にまつわる問題点やコメントを自由な立場から深く切り込んで積極的に発信していこうと思っています。
応援よろしくお願いします。

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